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(672) 正 し い 血 圧 

   (672) 正 し い 血 圧 
   
  明治38年(1905年)、ロシアの軍医・コロトコフは、ゴム袋で上腕を圧迫し、それを緩めて行くときに 心拍に同期して発生する血管雑音 を聴診器で聞き取った。

♣ 研究の結果、その血管雑音は 「収縮期血圧」 によく一致していた。彼の発見に因んでその音は 「コロトコフ音」 と呼ばれ、現在も血圧測定の基本原理となっている。

♣ 戦後、日本の医療は結核などの感染症治療から脱皮して、高血圧などの慢性疾患を対象とする余裕ができた。高血圧は、放置すると 脳・心・腎の血管病変 が進み、寿命が短くなることが知られていた。しかし血圧は、どのレベルに保つのが生理的に正しいのかは いまだに議論が百出(ひゃくしゅつ)している。

♣ 動物の実験で、持続する高血圧では「脳出血」が必発、これは人間の高血圧に似ていた。我が国でも「秋田県」などの北国で「高血圧+脳出血」が頻繁であり、血圧を下すと脳出血も少なくなる経験があった。

♣ 降圧薬の進歩とともに、血圧の望ましい生理的なレベルが研究され、それは時代とともに 160 (ミリ水銀柱) から 150 → 140 → 現在 130 へ、と だんだん降ろすことが可能となった。その勢いが続いて日本では今、血圧を 120 まで降ろしたらどうか、という意見があるほどである。
正しい血圧

♣ しかし、ここに来て人々は、血圧値はナゼいろいろ変動するのかを真面目に問い始めた。 をご覧あれ。上段から、1 時間ごとに、動脈から直接記録した 心拍数・収縮期血圧・拡張期血圧 である。血圧は 昼間 体の動きに応じて高く、夜間 寝ていれば低くなることが見てとれる。

♣ このように変動する血圧なのに「私の血圧は 130 / 80 です」 なんて言えるはずはない。この変動は自動車のエンジンの動きを想像すれば 容易に理解できる。つまり、血圧もエンジンも 必要に応じて馬力が変動する からである。

♣ このことは台所の水圧でも同じこと、必要に応じて水の流れは水圧によって調節されるのである。つまり、必要に応じて、ちょうど良くなるような調節が人体でもなされているのだ。

♣ 健康な人の血圧はある幅の値の範囲内にある。それがいわゆる正常な血圧とされるが、それは のように変動するのが常である。その上限は昔 160 と、以後 150、140 のように下げられてきたが、いったいどの数値が正しいのか? それは何を基準として決められたのであるか?

♣ 従来の基準は 「寿命」 が一番長くなるような血圧であった。その結果、血圧は低いほど長生きするらしい、との成績が得られた。そこで 「血圧が高いことは “悪” 」 という考えが我々の頭の中に刷り込まれたようである。しかし、近年 次のような反省が沸き起こっている。

♣ 人間はいろいろのストレスに適応して生きて行かねばならない。これは車の運転で 「アクセルとブレーキ」 の関係になぞらえられる。車は必要に応じてアクセルを踏み(血圧を上げる)、またはブレーキを掛ける(血圧を下げる)。

♣ 同じく人の体でも血圧が刻々変動するのは、身体の都合によって血流の需要・供給の関係が調節されているからである。血圧を電気の 「電圧」 に置き換えて考えよう… 電圧が高いときは多くの仕事をしている時ではないか?もし電圧を下げたら、仕事は止まるだろう。へたすると停電の憂き目に合うかもしれない。

♣ 日本は老人性の脳梗塞や認知症が多いことで知られている。そこで近年、新たに問題化したのは 「血圧の目標値」 である。それは 「高すぎない血圧、低すぎない血圧」 である。ナゼ低い血圧が問題になるか、それは老人の血圧が若者の血圧と同じ基準で判断されることを避けるためである。近年は 還暦の齢までの収縮期血圧は古典的な 「90 + 年齢」 が見直されているのほどなのだ。

♣ 戦後の一時期、北の国々で血圧は高く、元気は良いが脳出血が多くて「短命」の人が少なくなかった。ところが近年は、まるで逆の現象が起こっている … 降圧療法の普及で血圧は下がって寿命は延びたけれど、意外なことに 脳梗塞・認知症 などが増えてきた。

♣ この原因は血圧だけではなかろうが、血圧が下がり過ぎれば「脳循環」にも影響が及んでくるのは当然である。短く言えば、「血圧と脳症状の二律背反」が近年の検討材料になっているのである。どちらが選ばれるかの問題ではない ―― どちらも大事だ、脳症状のない長生きが良いに決まっている。

♣ ここが知恵の出し所 … お年寄りの血圧を下げ過ぎてはいないか?を考えてみよう。「130 を越えたら始めましょう … 」などの訳の分からない モットー で人生を誤らせてはいけない。「血圧は低いほど有難い」という妄想 もここで一考を要する時代になったのだ。

♣ このままにしておくと、「血圧は 120 を目標にしよう」 などの誤った考えが導入される怖れが大いにある現今なのである。 1983字

要約:
血圧の目標値は 高い所・低い値 が乱れ飛び、降圧療法の目的もはっきりしないことが多い。 従来「高血圧は悪、降圧療法は善」とされていたが、正しい血圧とは「寿命を延ばし、かつ脳梗塞や認知症などの副作用を招かないレベル」のことである。 老人の血圧が下がり過ぎていないかどうかをよく観察してみよう。 参考: 新谷:「心拍数と血圧の日内変動」; 図説・色素希釈法 pp 85、南山堂 1986.

職員の声

声1: 2 メートルの大男と 30 キロの小女で、年齢が同じなら 標準血圧は同じなのだろうか?(答: 同じである ! たとえば、スズメ・ ウサギ・ ウマ の血圧は同じであり、およそ 120 mmHg くらいだ。温血動物の血圧は一般にほぼ同じである)。

声2: 同じ降圧剤の治療を もう 20 年以上、受けて血圧は安定しているが、最近 めまい が頻繁だ(答: 同じ血圧値でも、それが 40 歳のものか 90 歳のものかによって 意味が全く違う... 齢をとれば 同じ血圧でも環境変動への適応力は著しく落ちて、動悸・めまいなどが生じる ... 治療による血圧は高すぎても、低すぎても良くない)。

声3: 血圧を測ってあげて ”良い血圧ですね” と告げても、高齢者はしばしば ”早くあの世に行きたい” とおっしゃる ... そして 1 億円余の税金支出を受けて長生きなさる…矛盾だなー(答: スエーデンではこの矛盾が解決され、寝たきり老人の存在は許されていない … でもそれは better ですかな?)。

声4: 血圧を下げる飲み物がテレビで勧められ、「130 を越えたら飲みましょう」と言っている(答: 130 を血圧とは言っていないのが ミソ ! もしそれが血圧なら厚労省に取り締まられる ... 製薬会社は合法的な商売熱心だが、130 は頂けない)。


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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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