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(681) 美 し い み ま か り

(681) 美 し い み ま か り  

 20 世紀半ばまで 日本の人口構成 パターンは 完全なピラミッド型 (図 左)であった1)

♣ それの老人問題の特徴は:―― 人口は年齢別に 毎年 約 1 % の割合で減る; その結果 老人の数は若者より必ず少ない、 数の少ない老人の老後は 数の多い若者で看て貰うのが楽(らく)だった、 老人の眼で見れば ピラミッド型の人口構成は “極楽”、しかし若者から見れば毎年 一定数の仲間が死亡して行くのだから脅威(きょうい)であった。

経済の発展により人口構成はピラミッド型 (図 左) からその後 茶筒型(図 中)を経過して 凧(たこ)型(図 右) に変わる 1 ) 。近年の 茶筒型 の場合、老人問題の特徴は:―― 70 歳まで中年代の人々の数は減らず、どの年代もおよそ同じ数であるがーー団塊時代の二山を除くーー、以後は直線的に 毎年 3.3 % ずつ減って 100 歳に至る 1 ) 幼若者はどんどん減り、老人の老後を看る若者の負担が増える。

美しいみまかり

♣ 元気な老人も 70 歳以上生きれば さすがに弱って来る人が出始める。若者は 老人が認知症で自立生活ができなくなっても生き続ける様子を見て、ヒトはナゼ衰え、ナゼ死ぬのだろう?と自問自答する。

♣ 近年の科学の進歩により、長寿の説明は ヘイフリックの回数券 50 枚説や ガン細胞は永久に死なない事実が紹介され、ヒトの寿命はコントロール可能の灯りが見え始めた。だが長寿に関して介護現場の人たちの顔は決して明るくない ―― なぜって、「長生きできれば 本人は満足だろうが、その人の生活の面倒を誰が看るの?」という疑問が真っ先に来るからだ 2 )

♣ その老人は戦後 総人口の 4 % 程度 だったものが 今 28 % と 7 倍に増え、少し後には 40 % になる計算だ ―― その上 老人の面倒を診る若者の数は 1/2 に減る ―― 差し引き、若者の負担は 14 倍 に増える のだ。もし老人が 「病気」 で 「長生き」 すれば、納税者がどうなるか、あなた 考えたことがある?昔 「子沢山」 で国は栄えたが、今 「老沢山」 で国は、北欧諸国のように しっかり頑張らねばならない。

♣ ここで 演習として、要介護予算の代表ケースとして “要介護 2 ” を選んでみると―― 毎月の予算はお一人様約 20 万円だ。この額は大学卒初任給料 20.2 万円(厚労省)とほぼ一致する。つまり大卒初任者一人が給料全部をはたいても やっと 介護 2 お一人 の予算を賄える に過ぎない…しかし、もしそうすれば、自分が丸裸となるから、仲間 5 ~ 6 人と組み お金を分担し合って要介護 2 お一人を支える必要がある。

♣ もし、要介護 5 (毎月約 35 万円)お一人分の予算を賄うとなると、大卒初任者が 10 人ほど必要となる。パール特養の入居者定員 50 人を養うとなれば、500 人の大卒初任者の関与が必要となり、入居者維持に要する大規模な経費に驚かされる。

♣ 働かない多数の人権を守ることは このような大事業であるが、当の老人たちは何も知らずにお過ごしだ。「病気で長生き」 をする人の 「尊厳」 を守るために こんなに大規模な経費が掛かることを見て、若者たちは “自分の場合はピンコロで逝きたい” と洩らす 3 )

♣ そこで、その 「ピンコロの実態」 を見てみよう。 ピンコロ とは、持病がない老人の急死であり、1 時間 ~ 1 日 の経過で逝く。これは 「藪から棒にポックリ」 という急死ではなく、その実態の 7 割は 自分の心臓病に気付いていなかった人の 最後の突然死である。

美しいみまかり

事故死でピンコロを希望する人はいないだろう。

♣ 老人の本筋のピンコロは (イ) 風呂溺れ ―― パールの在宅介護で毎年事例が発見されている。これは今や 交通事故死の年間数 5,000 人を越えており、圧倒的に高齢者の事故、特徴は お湯の中の居眠り死である(上の図 = 風呂溺れの数下の図 = 入浴中 寝ている時間)。 ナゼ 高齢者で年々増えるのだろう?

美しいみまかり


♣ 次に多いのは、 (ロ) 大動脈瘤破裂であり、パール 19 年間の観察では、92 歳女子 1 例のみだった(前夜まで症候なし、翌早朝 大動脈破裂で即死)。 三番目の (ハ) 大動脈解離(かいり)は、同じく 19 年間で 95 歳男子の 1 例だけだった(胸痛発作で救急病院へ、苦悶(くもん) 4 時間後 大動脈解離で死亡)。 (ロ) (ハ) は稀であって、希望しても叶えられるものではない。よく引用される 「急性心筋梗塞」 は近年 初回 の発作は大抵 助かり、以後 何年かの経過で亡くなる。

♣ 多くの若者たちはロマンティクに、夜 寝る時はふつうに床につき、朝 冷たくなっている “美しい みまかり” を夢見る….「でも私の体がすっかり腐敗した後の発見はイヤよ ! 」などと冗談をおっしゃる。

♣ どこまで本気かな? 夢を語るのは自由だが、ナゼそれほどにピンコロ願望が強いのだろう? 認知症の死と異なり、若者のピンコロならきっと 「美しい みまかり」 と思うからだろうか? 1984字

結論 : 介護に ヒト・モノ・カネ の物入り、あげくの果てに “美しい” とは言えない最期の姿がある場合、若い介護士の心は晴れない。 人々がピンコロに過剰な興味を誘われることのないように、「死が 美しい」 と思えるような条件を求めたいと思う。 お年寄りだけに限らず、私どもみんなが 「美しい みまかり」 で世を去ることが出来ればなー、と私は念じる。

参考: 1)  新谷:「屈折年齢と福祉」;福祉における安全管理 # 579、2016. 2 ) 新谷:「長寿、え?1,000 歳?」;ibid # 582, 2016. 3 ) 新谷:「図説:ピンコロで逝きたい人」; ibid # 627, 2017 

職員の声

声1: 風呂溺れは 「気絶」 による、と聞いたことがある――温度や血流の変化で梗塞・心不全におちいり溺れるのではないか?(答: それは有り得る… でもその死亡診断を 「気絶」 とは書けない、そのためにはいちいち煩雑・高価な 病理解剖の分析 が必要になる)。

声2:  「美しいみまかり」 とは綺麗な日本語――私は自立して生活を続けながら、美しく身罷りたい(答: 最後まで現役を、というあなたの主張は素晴らしいことだ)。

声3: 寝たきりの在宅ご利用者、どのような人生の締めくくりを望んでおられるのだろう?(答: パールでは寝たきり 10 年の胃瘻患者が一人おられるが、枕元で 「みまかり」 についての会話はありません)。

声4: 美しいのはやはり 「老衰死」 ではないか … 穏やかな眠りに就いたその姿は 「神聖」 にも見える(答: ほぼ誰もそう思う…しかし一部の権威者は直前まで 「生の尊厳」 の手を打て、と意見を引かない… スパゲッティ賛同者は案外に強硬なことがある)。




プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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