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(674) 三 つ の 言 語 障 害

(674) 三 つ の 言 語 障 害

新年度に入って五月、気分を改め その昔の新人時代を思い出そう。皆さん方は 超高齢者とお話する機会が多いと思うが、彼らの話し方の特徴はいかにも「老人風」であることに気付くだろう。

♣ その理由は、齢をとると、認知症の頻度が「85 歳で 4 割、100 歳で 8割」と増えることを反映する。高齢者であっても、認知症でない人なら普通のお喋りであるし、認知症になれば認知症風の話し方になり、後者を 「老人風」 と呼んでいるわけだ。今日はその二つの違いを勉強する。

♣ 近年、65 歳以上の人(厚労省の言う “老人”) であっても 「自分は健康だ」 と思って 活動的な人が うんと増えた。でも同時に 老人の総数も増え、高齢者との日常的な会話で、従来 知られることの少なかった 異変 に出会うことも増え、私たちを戸惑わせる。今日の話題の 「失語症」 も その一つである。

♣ 日帰りの デイ・サービス の M 様( 81 歳女性 要介護 3 )は脳卒中後、失語症が始まったと言われている。私の新聞知識であるが、「失語症の方は、平仮名は苦手で五十音は混乱する」 と記載されていた。ナゼこのようなことが起こるのか?

♣ さて、言語障害には 3 種類 がある。 運動性失語 (ブローカ失語、ブローカとは医師の名前) :「運動性」 とは、言語発声に関する顔や喉の筋肉運動のことであり、そこが故障すると言葉の異常が起こる( * 。故障の起こった脳の場所は 「前・左側頭葉」 にあり、言葉の命令が出なくなる; 特に 「最初の言葉」 が出ない。

♣ さらに、形容詞が無くなる(例: チチ…カネ…ナイ 、など) 。まるで 電報の文章のようだから 「電文様」 と表現する。また、とつとつとしているから 「非流暢性」 とも言う。読む漢字は苦手、仮名はもっと苦手である。ちなみに、左側の脳梗塞後には、ブローカ失語が伴いやすく、その場合、体の麻痺は 「右側」 に現われる。

三つの言語障害

感覚性失語(ウェルニッケ失語、ウエルニッケも医師の名前): 「感覚性」 とは、言語を理解する脳機能が故障することであり、その故障場所は やはり 「左側頭葉」 ()にある。他人の言葉を聞いても理解できない。自分の言葉は出るけれど、文法はグチャグチャである (例: 私 お芋 青い 渋谷 暑い、など) 。言葉は するする出るので「流暢性失語」という名前もある。もちろん、本人は自分の言ったことを覚えていない。

♣ これら脳の障害の主な 原因疾患は 「腫瘍・外傷・脳梗塞・脳出血」 であり、障害範囲は 「限局性」 である(病巣の大きさが “栗 ~ 卵” 程度と小さい)。多くの場合、失語 以外の症状は軽度であり、お喋り以外は一見 正常な人である。

♣ 失語症はこれら「二つ」であって、名前が有名な割に、実例は案外に少ない。もし失語が「運動性 + 感覚性」両方の特徴を持っていれば 「全失語症」 と言う。

認知症の言語障害 は驚くほど多い … ナゼなら 日本では高齢者が年々増加し、認知症もどんどん増え、今では 500 万人、やがて 800 万人に倍増していく。さらに上記の失語症は比較的に安定しているのに反し、認知症の言語障害は年々進んで行き、最後には 「全失語」 に至る特徴がある。

♣ 認知症は人間の人間たる理由の 大脳細胞の減少 によって起こる。つまり上記の ① ブローカや ② ウェルニッケは 図 に示すように狭い範囲の脳障害であるが、認知症での障害は大脳全体に広く浅く起こる のだ … このため その特徴も異なる。

♣ 認知症の周辺症状である 「大声・多弁・寡黙(かもく)常同(じょうどう) 」も一種の言語障害であり、その原因は 大脳の全範囲に及ぶ脳細胞の脱落に基づく。それ故、認知症の言語障害は 失語症 とは言わない。

♣ 中核症状の 「失見当識 = 時・所・人」 の判別不能がこの順で起こり、認知症の進行に伴って 動物と同じように「時」が分からなくなるから、「死」の恐怖もない。「所」も「人」も分からなくなるから、言語障害なのか 意識障害なのか曖昧になって、トンチンカンな会話となる。

♣ 「失」 (しつ) の文字がついた認知症の症状例を挙げてみよう: 「失読」(しつどく) = 字を見ても意味が分からない。「失書(しっしょ) = 自発文字が書けない。「失行 (しっこう) = 意味ある一連の行動ができない(ライターを渡しても、なで回すだけで、火をつけられない—— この失行の点でヒトとサルの違いがよく分かる)。「失認」 (しつにん) = 見えたり、聞こえたりするが、その意味を理解しない。

♣ 「あーうー」 と言うだけで喋れないのは 「運動性」失語症、「きょとん」として意味を分かって貰えないのは 「感覚性」失語症。「運動性」と「感覚性」失語症の両方の特徴があれば全失語症」と言って、認知症の末期にはこうなる。ただし「難聴」は「耳」の問題であって失語症とは区別される。

♣ 失語症の治療・リハビリは言語療法で対応するが、一般の「麻痺」のリハビリと同じように、その道はけわしく、忍耐を要する。 1966字

要約: 言語障害は、 一見 正常に見える人が 「しゃべれない」 = 運動性失語。 他人が しゃべっているのに 「意味の理解がない」 は 感覚性失語」である。① = ブローカ と ② = ウエルニッケ の名前はよく知られている割に 実地では 少ない。これに対して 認知症による言語障害は日常的に多数 経験される。これの原因は大脳細胞の全般的減少によるものであり、特有の「失見当識」(しつ・けんとうしき**を伴う。これは また「老人風お喋り」の特徴でもあり、認知症の目印とも言える。

参考:  看護のための症状 Q&A  https://www.kango-roo.com/sn/k/view/3518. ** 失見当識 = 時・所・人の見当が付かない状態。

職員の声

声1: ブローカ失語・ウエルニッケ失語なんて初めて聞いた … デイ・サービスには大声の人はいないが、「多弁・寡黙(かもく)・常同(じょうどう)」 の人をよく見かける(答: 福祉関係では 「認知症」 による言語障害が圧倒的に多い ! )。

声2: 脳の左側や脳全体に及ぶ障害によって、こんなにも言語障害が異なるとはとても勉強になった(答: ふつう、言葉の違いなんて 「その人の個性」 くらいにしか思わないが、キチンと原因場所による理由があるのである)。

声3: 言語障害の元は 神経細胞の脱落 にある、とは怖いことだと思った(答: そこに存在する細胞が腐ったり癌になったりするのなら まともな対応方法も考えられる… しかしそこに有る脳細胞が消えてなくなる認知症なら、「困る」以外の対応法はない)。

声4: 私は認知症の方の会話を失語症の観点から考えたことがなかった … お話を聞けば、なるほど 脳細胞が脱落 することに原因があったのか(答: 言語障害には 脳の問題と構語(発音器)の障害 があるけれど、認知症の言葉使いにも関心を示して理解をしよう)。


プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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