(62) 過失と責任  特に「骨折」について

  (62) 過失と責任 特に骨折について   

  介護の世界における過失と責任を考えます。

♣「過失」を言い換えれば「失敗、ミス、あやまち」、不注意による「しくじり」、英語で “error, mistake, negligence”:などと言えば、どれかに当たるでしょう。「過失」がどれほどか、によって、「責任」も おのずと問われてきます。

♣ 過失の約7~8割は「ヒューマン・エラー」(人為ミス)だと言われます。それゆえに「ハインリッヒの法則」が強調されます( = 「重大事故一つ」の元に29の「軽い事故」があり、その元に300のヒヤリハット・ミス“うっかりミス”が関与する、というもの)。パールでは、ご存知の通り、ハインリッヒに学び「ヒヤリハット報告書」が よく機能しています。

♣ 次に 責任とは、ある人が、原因結果現象に関与したと判定されれば、その人に責任あり、というものです。責任を (a) 故意責任と (b) 過失責任に分けましょう。介護の世界で (a) 故意責任は まず無いでしょう(例外:先月、ある老人施設のナースが老人の爪をはがす習性がある、として告訴された例があります;これは無罪でした、肥厚白濁した老人の足趾白癬爪の処置で爪が自然にはがれたのを、誤って観察・告訴したものでした)。

♣ (b) 過失責任、これは大問題です! というのは、過失があったかどうか、が論争されるからです。なかんずく「骨折」は中心課題となります。介護の世界では「介護者」だけでなく、「介護される側の人」の責任も かなり大きいのですが、後者は「認知症」のヴェールの元に“問われない”ことが多いという特徴があります。皆さん方は「骨折させたい」と思いますか?違いますね。骨折の大部分は「介護される側の責任」もしくは「不可抗力」によるものと思われます(参照:パールの安全管理 #50:六つの「べからず」)。にもかかわらず、施設側に責任が問われることが少なくありません。

責任の押し付け問題は、なにも介護施設や病院に限りません。たとえば、子供公園で事故があれば、きっと「区役所」に責任が行くでしょう。鉄道の駅で発生した転倒は駅長へ責任が流れて行きます。そこで被告と原告が争う訳です。したがって、過失の有無さえ未解決なのに、その責任の行方に至っては、一定の公式で判定されるシステムはありません。みな、個別的に争われ、個別的な判定が下ります。

♣ そこで私の意見を述べます。老人の骨折は、基本の病変として「骨粗鬆症」があり、これは一種の危ない「コワレモノ」ですが、普段はこれぞという症状がありません。しかしある日、とつぜん、「骨折」として、その症状が現われ得るものです。これは、「心臓の動脈硬化」が、とつぜん「心筋梗塞」として、症状が現れるのと原理は同じです。つまり、骨折は介護者の過失というより「骨粗鬆症の発症」に過ぎず、特別な理由がない限り、介護者の「過失」を問うのは不適当かも知れません。たとえば、臥位の体位変換・オムツ交換のように、日常のケアによっても骨折が起こり得ます(パールの安全管理 #1――万年目の亀)。もし故意過失なら、巨額な「慰謝料・リハビリ経費・親族付き添い経費・弁護士費用」などに至る例もあります。

♣ 私は、骨折をするご利用者を守りたい と思います;だけど、理由もなく責められることの多い介護者をも助けたい のです。年々重症な高齢者が増える社会の中で、骨折を、すなわち介護者の過失とみなして責任問題に発展させることは、だんだん検討され直す時代になりました。しかし、施設側が常に100%無過失とも言えないでしょう。したがって、事故が起これば「正確な事実の把握」、「上司とご家族への報告」および「誠実で素早い対応」が極めて大切となります。

職員の声

声1: 老人の骨折は怖いです、すべて介護者の責任にされると辛いです、骨折がその時起きたのか、別な時に起きたのか はっきりしない事もあります(係り:転倒して1週間後に骨折が判明という、まぎらわしい例もあります)。

声2:
骨粗鬆症の名前は知っていましたが、それが骨折の直前の状態であるとは気づきませんでした(係り:どうか危機意識を持って下さい;ことが起こったら、「正確な事態把握・上司へ報告・誠実な態度」の三つを忘れないでね)。

声3: 声高に責任を追及するご家族もあります(係り:コワレモノを預けた人・預かった人、お互いの立場は平等です;「責める・責められる」の関係を再検討する時代になりました)。

声4: 不当な責任追及をされると、過日の産婦人科の告訴事件のように、人がいなくなるでしょう(係り:世界中、老人は転倒し骨折するものです、また 施設で長くつき合えば、結局、亡くなります;良い人間関係が一番大切です)。

声5: 私の祖母は 2年前、ショート・ステイ中に転倒・骨折をしましたが、その時に、十分な説明も保障もありませんでした(係り:あなたは、家族として原告の、 かつ職員として貴重な被告の立場にあります;ご意見を下さい—―答え:私の母がキーパーソン、骨折は尾てい骨、入院しましたが手術適応はなく、施設に戻りました;後からその状況説明があり、保障はありませんでしたが、”そんなものかな”と納得しました;認知症がかなりありましたし。ーー係り:トラブルが収まって 良かった、良識ある解決でした;場合により、謝罪と賠償金をもらったものの、人間関係が疎遠になることもあり、施設に戻りにくい場合もあると聞きます。

係りより ―― 施設本部が事故保険に入っていれば、施設サービス・在宅サービスを問わず、トラブルを静かに片付けてもらえる場合もあります、比較的に少ない経費で済みます。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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