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(678) ボ ディ ・ ラ ン ゲ ッ ジ

(678) ボ ディ ・ ラ ン ゲッ ジ  

デイサービスをご利用中の M 様( 86歳 女性 認知症 要介護 2 )は、性格が短気で怒りっぽく、活動中に不穏になる。新人職員が対応すると、さらに怒りっぽくなるが、ベテラン職員なら、まったく同じ対応なのに落ち着いてしまう。ナゼだろう? 彼女の脳に何が起こっているのだろうか? 精神科の O 先生 のご判断を願った。

O 先生 この方の脳は 「認知症の脳」 だろう。言葉掛けは「全く同じ」と言うから、バーバル反応は新人とベテランでは同じな訳だ —— バーバル(英 Verbal)とは、“言葉の” と言う意味で、「声を使って接遇する」ことである; これに対して “non-verbal” とは 声を使わない接触、つまり “笑顔・態度・雰囲気” などで対応することである)。

♣ 例を挙げよう:―― 物語の 「桃太郎」 は、お供の 「犬・猿・雉 (きじ) 」 との会話を言語(バーバル)で行ったのではなく、心や態度 (ノン・バーバル) で伝えたのである。つまり、認知症では言葉が通じないこともあり、自分が「桃太郎」になった気分で接すれば良いのだ。

♣ だから、問題は「ノン・バーバル領域」の対応の違いにあると言える。これは、言ってみれば プロとアマの相違 なのである。たとえば、ピアノの鍵盤を指で一つ二つ叩いてみる。きっと、プロもアマも同じような音を出るだろう。でも音楽を弾くとなると、プロとアマの相違は歴然とする。

ボディ・ランゲッジ

♣ 認知症に対する接遇もプロとアマの違いは、当の本人にも 傍の他人の目にも ハッキリと違う。どこが違うのか? それはノン・バーバルの領域での行動である。上記の “笑顔・態度・雰囲気” のほかに “自信・経験・毅然とした姿勢・包容力” などが挙げられるが(図1ーーTIPSとは”秘訣”)、それを日本語では「スキンシップ」と呼ぶ 1 ) 。「目は口ほどにモノを言い」 という川柳(せんりゅう)がある。人間の意志疎通には、いかに非言語要素が多くを占めるかが分かる。

♣ 言葉は “口でしゃべる” からオーラル・ランゲッジ (oral language)と言い、他方、体で伝える会話の一つは スキンシップ であり、または “ボディ・ランゲッジ” (body language) と言う人もある。誰でも新人の頃には、先輩ベテランの振る舞いを真似るが、やはり 「場数」 (ばかず)を踏んで 自分の気持ちが落ち着けば、ご利用者も落ち着かれるだろう。

♣ 何事も 「経験は宝」 、私たちはある意味で 「俳優・女優」 として演じることも必要である。ノン・バーバルの場数を踏むこと、すなわち良い 俳優・女優 になって仕事に励むのが上達の要(かなめ)である。それだけに、新人はスキン・シップを磨くように指導される。

ボディ・ランゲッジ

♣ 上で紹介した M 様 86歳 の脳の中で何が起こっているのか?という次の質問であるが、彼女の脳の中には、珍しい出来事は何もない ! そもそも認知症とは、単なる 大脳新皮質 = 「新脳 2) の部分脱落に過ぎない(図 2 ) … つまり人間の脳がイヌ・ネコ以下の動物の脳に近くなってしまうだけだ。

♣ 認知症の研究者は「脳細胞レベル」の研究して、その原因を掴もうとするが、他方、私たちの仕事は 認知症の行動をよく観察 して、その方の心身の安定に資することではないか。1281字

要約:  同じご利用者を接遇するのに、新人とベテランでは 結果がまるで違う。 新人は「言葉だけ」で接遇して効果 7 %、ベテランはボディ・ランゲッジで対応するので効果 90 % 認知症は新脳 (大脳新皮質) を失った状態だから、オーラル・ランゲッジだけでは十分 意思の疎通が行われず、ここにボディ・ランゲッジの活躍場があるのだ。

参考: 1) スキンシップは身体の一体感を共有しあう行為を指す言葉で、和製英語。正しくは physical contact, touching であるが、「直接 肌に触る」のではない。 2)  新脳 動物の中で人間だけが獲得した「大脳新皮質」のこと。ヒトとチンパンジーとの決定 的な違いは、脳の構造や機能として、言葉を使用できる新脳の機能があるかどうかで決まる。

職員の声

声1: ボディランゲッジの身振りはちょっと難しいが、優しい気持ちで接すれば おのずとうまく行くだろう(答: 同感 ! 上手・下手ではなく、問題は「心」だよね)。

声2: 言葉が通じなくなると 「生きる喜び」 が減るのではないか?(答: 認知症の脳は喜びの感覚が低下している… また、イヌにはイヌの喜びがあることも理解できる)。

声3 : 物語の 「桃太郎」 が分かりやすい例だった … 桃太郎は 「身振り」 で家来の「犬・猿・雉」を従えたに違いない(答: 「鬼退治」の物語を初めて聞いた時は、ヒトの言葉が動物にも伝わって当たり前と思ったが、考えてみれば “通じるハズ” はないから、やはりノンババールの言語を使ったのだね)。

声4: 認知症との会話では、相手が「理屈の言語」ではなく「大脳辺縁系の感覚」で聞き取って貰えるような工夫が望ましい(答: 犬と遊ぶとき、手振り身振りで愉快な時間を過ごすではないか… あの気分を思い出して会話をしよう。本文の図 2 で、一番上の部分はヒトの大脳であり言語が通じる脳… 図の二番目の部分はイヌの辺縁系の脳を示し、言葉は通じない(≒ 認知症)が、ボディランゲッジは通じることが分かる)。

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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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