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(695) 鳥 無 き 里 の 蝙 蝠

(695) 鳥 無き 里 の 蝙蝠 (こうもり)  
   
 さて、「生命」って何だろう? 

♣ 「生命は細胞より成り、代謝を行って子孫をはぐくむものだ」と、簡単に思われていた。しかし「風邪ウイルス」はそんな特徴を少しも持たず、物理的な「結晶」になって生き続ける「生命」である。定義というものは、いったん作成しても すぐに例外に突き当たって立ちすくんでしまうものだ。

♣ では、「病気」って何だろう?考え方にもよるが、今では病気を大きく 三分類 することができる:―― ① 感染症、② 腫瘍しゅよう)、③ 変性(へんせい)である 1 ) 。① ② についてはここで説明を必要としないだろう … 近年問題になるのは主に ③ の「変性」なのである。

♣ ここで 「変性」 について一言。 白髪・老眼・顔のシミなどは「変性」であるが、治療対象とすれば「病気」とも解釈できる。10 年以上使った車はポンコツ (= 変性) かもしれないが、必ずしも故障車ではない。人体の経年変化も しばしば「変性」と呼ばれるが、単なる中古か または病気なのか、その境目は一概に決められない。

図 1をご覧あれ … 昔と違って今の人はなかなか死なない ! 女性で言えば、95 % 以上は「高齢になった後 やっと逝く」。つまりその原因は 「70 歳前後で ガン・脳卒中」、それを免れた 「80 歳代以後は 老化・変性」 が主因である。
鳥無き里の蝙蝠

♣ ならば「老化・変性」って何? 分かりやすい言葉で言えば、「使い古してガタが来た状態」をイメージしよう。そもそも 万物は時間がたてば必ず古くなり老化する。貴金属の「金」でさえ、宇宙が誕生した 138 億年まえには 「水素」 だったのであり、それが星の中で老化・圧縮されて「金」になるのだ 1 ) 。人間の体は 「生命」 だから、生まれて 100 年も経てば古くなることは水素と同じだが、金や銀にはならない。

♣ では何になるのか?これに関して、老科学者の ストレーラー は 1960 年に、老化の原則 として 「普遍・内在・進行・悪化」 2 - 3 ) の 四つ を発表したので、それをここで復習しておこう。

普遍」とは、誰の体にも起こり、例外はないことだ。ソクラテスは死んだ、ナポレオンも死んだ、でも 私の母 だけは例外にして下さい… それはムリである。

内在」とは、老化の機序はその人の体の内側にあることである。つまり他人様はどうであれ、あなたの老化はあなたの DNA の中で進行する。

進行」とは老化は必ず進行する、という意味であり、後戻りすることはない ! テレビで 「若返りのサプリ」 が宣伝されるが、それは不可能であるにも拘わらず、多くの人がこれに引っ掛かる。

有害」とは、老化現象は「健全」の反対、つまり害をもたらす現象であって、白髪・老眼・難聴などの例を挙げるまでもなかろう。つまり老化とは、日々健康から遠ざかることであり、それゆえにエジプトではピラミッドが建設され、日本の「前方後円墳」も造られて、永遠の命が懇願された経緯(いきさつ)がある。

♣ 150 年前まで、人間の老化は天皇や将軍のような保護を受ける身分であってさえ、その生涯は 50 歳前後であった 4 ) 。しかし、現在のように誰しもが 90 歳や 100 歳になる時代になると、老化 ① ② ③ ④ の行きつくところの様相が大きく変わって来た。その典型が 「年寄りボケ」 (認知症)の頻発である。

♣ では、認知症って何か?それは、人間が 「子供の頃から育って得た 大人の知性を、再び失うこと」 であり、その頻度は還暦 60 歳以後 年齢に比例して増え、100 歳になると 100 % 全員がこの認知症に陥る(図2 ――横軸は年齢、縦軸は認知層の頻度 5 )

鳥無き里の蝙蝠

♣ 原子の 「水素」 は老化 して 「金」 になったことは上述通りだが、人間は加齢・老化 して 「認知症」 になることが分かった。人間だけではない … 身の周りの「犬・猫」などの飼育動物も老化 して認知症になる。

♣ 人間は 「知恵によって」 過去 多数の病気を克服して来た。認知症が、「もし病気であるのなら」 これも克服できるハズであり、事実 いくつかの薬物が製造・販売されてきた。

♣ その薬物の効果はどうだったか?正しく診断された認知症が薬で治った、という例が以前にあっただろうか? 過去のレーガン大統領・イギリスのサッチャー首相をはじめ、近年の 三笠宮様 も含めて、認知症への対応は困難を極めている。なぜなら「老化」は ひたすら「進行するのみ」 だからである。

♣ もし認知症を「脳の病気だ」 と思っていたのなら、私たちは眼を醒ますべきである … 脳の症状だけでなく、「全身」を見よ ! 白髪・視力・聴力・残歯・着衣・入浴・トイレ・転倒・骨折など ... すべてに思い当たる節(ふし)が見えることだろう。そして 上記 ストレーラーの 4 原則通り、認知症の正体が 全身の「老化・変性」であることを率直に受け止めることが出来るであろう。

♣ こと ここに至ってフランス政府は従来販売されてきた認知症薬を来月(2018 年 8 月 1 日)から保険適応外とすることを決めた。アメリカの大手製薬会社は同じように、認知症の薬物開発の研究を打ち止めにすると発表。

鳥無き里の蝙蝠

♣ では 華やかに使われている高価な 今の認知症薬物は一体何だったのか?それは「鳥なき里の蝙蝠」 (図 3)だったのだろう。つまり、他に有効な方法が無いのなら、藁(わら)をも掴む努力の実現だったのではないか。このことは その昔 抗生物質の 「ペニシリン」 が出現する前の 「サルファ剤」 に相当するのだろう。

♣ 私たちは結論として、老化の 4 原則を無視せず、「超高齢になるまで生存できる現在の社会」 に深く感謝 し、それ以上の欲張りを慎みながら、心豊かな日々を過ごしたら如何だろうか。2022字

要約: 人々の 95 % 以上が超高齢になったあと逝く 素晴らしい社会、その死因の多くは 「老化・変性」 の認知症である。 従来 認知症に用いられた薬は 変性 (= 認知症」)には無効であることが判明し、フランス ではこれらの薬を保険適応外とした。 しかし薬がなければ不安であろう … そこで、当分の間、日本では 「鳥なき里の蝙蝠」 として従来の薬が用いられるのではないか。 

参考: 1) 新谷:「病気予防はどこまで?」;福祉における安全管理 #648, 2017. 2 ) S trehler BL, General theory of mortality and aging. Science Jul 1960: 132 (3418), pp14~21. 3 ) 新谷:「加齢と老化の今後」; ibid # 626, 2017. 4 ) 新谷:「命の歩幅」; ibid # 620, 2017. 5 ) 幸有会記念病院(千葉市)院長のブログ: 「認知症の有病率」; 2015-01-31 2.
  
職員の声

声 1: 現行の認知症薬は病気の進行を遅らせる効果さえ無いのか?なぜ高価なのか?(答: 当初の期間 「進行を遅らせる」とされているが、 実地臨床ではそのあと 無効だ。 … 老化は自然に進行するものだが、それをを遅らせるって どうして証明できるのだろう?副作用はあるし、これほど難しい目的の薬だから開発費が膨大で、値段も高価になったのかもね)。

声2: フランス・アメリカ では「 認知症は薬で治る性質のものではない」 と率直に受け入れ、高価な薬品代を福祉のケアに回すことにした(答: その通り 天晴れな決断だと思うけど、利益団体からの猛反発を どのように かわしたのだろうか?)。

声3: 薬が無かったら認知症の人はどのように暮らすのか?(答: 「認知症」という言葉を 「老化」 に置き換えてみれば、それが「答」となる ... 上記の 「老化の 4 原則」 を思い出し、心静かな境地を学びたい)。

声4: 製薬会社の努力を認めてあげても良いのでは?(答: もちろんの事だ ... でも 効果が不確かで値段の高い薬を長期にわたって売り続けてきたんですよ … 鳥なき里の蝙蝠 (こうもり) とは、まさに このことではないだろうか?これは 昔 抗生物質の ペニシリン が現れる前の サルファ剤 の位置に相当するのかもね)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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