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(706 ) 福 祉 介 入 の 効 果

(706) 福 祉 介 入 の 効 果

物事は 放置しておくと進行せず、“介入する” と その程度に応じて 進行する。今日は 「介入」 の程度を、「軽く」 から 「重く」 まで観察してみて、その効果の実態を見てみよう。

♣ まず 「16 代 仁徳 (にんとく) 天皇 の 「かまど 物語」から。ある日、天皇が皇居の高台から遠くをご覧になると、人々の家からは煙が上がっていないことに気付かれた。天皇は 「民の窯 (かまど) に煙がないのは、貧しくて炊くものがないからではないか」 と仰せられ、三年間、税を免除された。これにより、宮殿は大いに荒れ果て、茅葦 (かやぶき) 屋根の隙間から星が見えるほどとなった。

♣ 三年がたって、天皇が同じ高台に出られて、遠くをご覧になると今度は、人々の家々から炊煙が盛んに立つのをご覧になり、「ワシの心は豊かになった;有難いことだ」 とおっしゃった(図1)。天皇が 「ご慈悲」 の気持ちで税を免除された結果 民の窯から炊煙 (すいえん) が立つようになったのを 「効果」 だと見よう。そもそも天皇の念頭には、「費用対効果」 などの言葉はなかっただろうが、現在の考えでいえば 「慈悲の介入のおかげで かなりの効果」 が得られたと言えるだろう。それは福祉の心の萌芽 (ほうが) だとも言える。
福祉介入の効果

♣ 次の話題は ナイチンゲール。19 世紀の半ば、ロシアは南下政策により トルコのクリミア半島 に進出、これを嫌った英・仏・伊が軍隊を派遣して “クリミア戦争” が始まった。砲火による戦死者は 20 万人を、負傷者は 100 万人を越える史上最大の悲惨な状況となった。フローレンス・ナイチンゲールは 現地を訪れ、看護を宗教から分離させ、傷病者を近代的な看護で看る体制を確立したことで有名である。

♣ 彼女は 最初は 「単なるボランティア」 の気分であったろう。しかし、彼女の活動は私的な経済範囲のものではなく、また、夜の電燈さえない現場で 「兵士の死亡率 55 % を 5 % にまで低下させた」という 巨大な成績があった(図2)。この活動を 「費用対効果」 の目で見ることは 適当ではなかろうが、もし見る とすれば 「単なるボランティア」 に過ぎなかった彼女の福祉の気分が 巨大な救命効果を産んだ、と言うことができよう。

福祉介入の効果

♣ 三番目の例には マーガレット・サッチャー 元イギリス首相を挙げる。イギリスはなにせ 19 世紀から世界の海を支配し、多数の植民地から上がる 「富」 で潤っていた。しかし 19 世紀半ば以後 20 世紀半ばまでの百年間 イギリスは大戦に巻き込まれ 国民はヘトヘトになった。そこに現れた労働党の政策 「揺りかごから墓場まで」 を国民は大歓迎し、人々は 政府に 「おんぶに 抱っこ」 を当たり前とし、働かなくなった。当然、国の財政は左前になり 「英国病」 と呼ばれる病に罹り、このままではイギリスは再起不能となる。

♣ 彼女の政策の一つが 「透析の 60 歳定年制」 である ―― 60 歳を越えると保険で透析ができなくなる。これによりイギリスは毎年 3 兆円に相当する国費の節約ができ、国は再起することができた。同じ問題で悩んでいたドイツも これに倣った。

♣ サッチャーの業績は、「費用対効果」 の 3 兆円を取り戻した、が、透析を受けられなくなった数万人の透析患者は世を去ってしまった。日本は 99 歳であっても透析を導入する国柄であるから、こんな荒療治は出来ないかもしれない。このサッチャーの業績は 「福祉の費用対効果」 とは言われなかったが、国難を見事に解決したものとして今でも評判が高い。

♣ 最期に 「日本の現状」 を考えて見よう。日本は 「建前 (たてまえ) の国」だ ―― 2000 年の介護保険以来、老人たちは 「オンブに抱っこ、乳母車」 を建前とする政府のやり方に慣れてしまった。お金がたっぷりあった過去のバブル時代ならいざ知らず、老人の増えた今の日本では 「 建前」 に固執するだけではなく、事態の変化に介入する 「本音」 も大事ではないだろうか。

♣ 昔の貧困・短命の時代には建前 ーー個人の命を護るーー が有効だった。しかし、裕福・高齢になった今の時代本音 ーー社会の安定を護るーー こそ大事なのではないか?

♣ 私たちは “ルー(Roux)の法則” の実務を学んでいるところである――つまり一番良いのは 「適切に行うこと」 だ、と。 上記の先達たちは 皆 時代の要求に見事な解答を示した。日本の福祉も、敬老精神の高揚と、ますます増える老人人口の「両者のつり合い」をどのように図ればよいのか、それこそが解答に繋がるのではないだろうか。 1857字 

要約: 効果的な福祉介入の 3 例を挙げた。② 近代の福祉介入には賛否こもごもであるが、鉄の意志でそれに介入したサッチャーは今だに物語として語り継がれる。 昔に有効だった建前は 「個人の命を護る」 ことで済んだ ... 現在は、その上に 「社会をも護る任務」 が重なる … 大変なことである。

職員の声

声1: 日本の福祉予算の支出先は 老人へ 70 %、子供へ 4 % … 驚くべき対比だ(答: お年寄りを大事にするのは 「礼儀と尊敬の念」 による … 福祉介入への利益効果などは考えの外だ… カナダの参考例では 老人へ 50 %、子供へ 50 %の支出である)。

声2: 社会の高齢化で困っている日本は、温情的な老人福祉を考え直すべきではないか?(答: 政治家はそれをとっくに知っているが、なにせ選挙での老人票の重さに負けてしまうようだ)。

声3: 日本もそろそろ高齢者に自立を求める政策を出しても良い頃だろう(答: スエーデンでは 「要介護 5」 を作らず、従って 荷の重い “寝たきり問題” もない … 高齢者対応は その国の政策によってずいぶん変わる)。

声4: 介護保険のお陰で皆さんご安心 … しかし、それを支える若者が減りつつあるのも事実… 福祉介入の 「費用対効果」 を真面目に考えたらどうか?(答: 日本は “一人の人間は地球より重い” という 建前のお国柄であり、たとえ老人一人であっても やはり地球より重いのだ …よって 「福祉の効果判定」 は 一筋縄 ・ひとすじなわ・にはいかない)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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