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(715) 認 知 症 も 生 活 習 慣 病 か?

(715) 認 知 症 も 生 活 習 慣 病 か ?

世の中は高齢社会を通り抜け、「超」 高齢時代になっている。もし自分が超高齢の独身であったら、どんな生活が待っているだろうか?

図 1 の一番上の列を見られよ――これは 戦後 昭和 22 年の男性の生涯パターンを示す。ご覧のように、昔には 「老後」 なんて存在せず、子育てが終われば 55 歳の定年が来る前に死んだものだ。その下の列は それぞれ 昭和 55 年、平成 24 年の状況であり、この頃 やっと 「老後」 が誕生した。

♣ 老後がない時代には、癌や脳卒中はほとんどなく、認知症なんて言葉を聞いたことも無かった。ところが今は老後が 30 年以上たっぷりあり、日々の暮らしをどうしたらよいのかを考える 混迷の時代 である。
認知症も生活習慣病か?

♣ W.H.O.(世界保健機関) は寿命を 「自立」 と 「依存」 に分ける。統計上、男は 70 歳・ 女は 74 歳までは 「自立」 であるが、それ以後、日々の生活を病院や介護保険などのお世話になる 「依存」、つまり、蟻に助けられるキリギリスのようになる。

♣ その上、65 歳を越えると 年々 「認知症」 が増え、100 歳ではそれが 9 割を越す(図 2)。しかも、老人の数は昔の 7 倍に増え (人口の 28 %)、このままなら、増えた敬老負担で 若者は押し潰されてしまう。 --- 図は 縦軸= 認知症の頻度 横軸=年齢 ーー。
 
♣ 振り返ると、戦後 20 年間程度、日本の死亡のトップは 「結核」 であったが、医療の進歩・ 生活の富裕化とともに結核は消え、「糖尿病」 が増えた。続いて 「心筋梗塞・ 脳卒中、更に続いて 癌 」 が死因のトップに入れ替わった。これらの病気は生活の富裕化に伴う寿命延長の結果でもあり、自分で招いた病気、つまり 「自己責任病」 とも言われ始めた。

認知症も生活習慣病か?

♣ 子孫繁栄のために、神様 が保証された人の寿命は 子を産まなくなった更年期で終る。だが人は更年期以後にも寿命が続くべく工夫を重ね、長生きするようになった。ただしこの場合は 「神頼み」 の恩恵が得られないから 「自力で」 正しく生きる必要があった。もう、神様任せの人生ではなく、自己責任で生きなければならなくなったのだ。

♣ だが、人間は野放図 (のほうず)に事態を放置し、勝手に食べ過ぎては糖尿病に悩み、脳動脈硬化の結果 脳卒中に陥った。癌 は不思議な病気と思われたが、その 8 割以上は やはり 自己責任病であることも判明した。つまり、人間は 「老後」 を節制することなく楽しんだ結果、これらの自己責任病を招いて、勝手に新たな死の脅威にさらされるようになったのである。ところで 人は近年著しく増えた 「認知症」 に対し、果たしてどう 付き合って来たのか?

♣ 以前、この疾患の原因は、血中の ベータ・アミロイ ド という物質 が大脳に貯留して脳細胞を死滅させるから、との見解が受けいれられていたが、今や アミロイド説 だけでは十分ではないことが判明した。そして、 驚くことに認知症は 「生活習慣病」 の一種であるらしい事実が近年浮かび上がってきたのだ !

♣ 認知症は中年時代の乱暴な生活とは 一見 無関係に見えたが、近年の研究によって認知症と言えども 脳卒中・ 心臓病・ 癌などと同じように、人々の高齢化が最大のリスクであり、これに従来の 「生活習慣病」 が密接に絡んでいることが判ってきた。

♣ この見解に基づき、フランス 政府は 2018 年 8 月 1 日から従来の認知症薬物を健康保険から外し、浮いた予算を認知症のケアに回すことにした。アメリカ もこれに同調して認知症薬の開発を中止することにした

♣ この事の影響は重大であり、まだ世界は混乱しているように思える。しかし、薬物療法は 99 % 無効と判った以上、認知症への対応は 「生活療法」 に移って行くのだろう

♣ 認知症が大脳細胞の減少に原因があることには誰も異存はないが、ではなぜ脳細胞は減るのだろうか?よく思ってみれば、高齢者で減るのは何も脳細胞だけではなく、全身のいたるところの細胞は減って行く。例えば、毛髪・ 臭覚・ 視聴力・ 骨~歯など、あたかもそれが寿命の終点に近づくかの如くに減って行く。

♣ そもそも高齢の慢性疾患を説明する 「因果関係」 は、正しい事情の設定がなされなければ間違いの元となる。「原因と結果の関係」 を逆に入れ替えてみても結論が変わらない時、初めて我々は 「真実」 に近づくことが出来る。従来 受け入れられて来た諸結論はその点で甘かったものが少なくない

♣  図 3 をご覧あれ ―― 前回にもお示ししたが、動物は種 (しゅ) によって寿命はおよそ決まっている。例を挙げると、「猫」 は自然放置時の寿命は 「5 歳くらいで元気」、手を掛けて餌を与えれば 「10 歳で老化」、さらに家の中で大事に育てれば 「15 歳で認知症」。
認知症も生活習慣病か?

♣ つまり飼育の効果は寿命と健康状態の両方に影響を与える。 押し広げて考えれば、人間は知恵と努力のお蔭で更年期後の長命を得たが、その長さだけで幸・ 不幸の判定はできない ―― 長命は徐々に生命の質に変化をもたらし、その代表格が 「認知症」 であった。だから、上記の猫のように、「長生き おめでとう ―― ご褒美は認知症です」 という矛盾に気付くべきなのである。

♣ 認知症の最大リスク・ ファクターは 「長命」 と言われるが、それに密接に絡むのが若い頃の 「生活習慣一式」 なのだ、という新しいアプローチがここに出現した。私たちはもっともっと調査を広げ、真実を見極める路を歩まなければならないのだろう。2071字

要約: 私たちは、戦前にはなかった 「老後」 を獲得することが出来たが、そこには 「認知症」 が手ぐすねを引いて待っていた。 老後に現われた病気の順番は、結核の消失、糖尿病・ 脳卒中・ 癌の参入であり、一番最後が 認知症の参加 であった。 これらの病気の元は広い意味の 「生活習慣病」 と言われている。私らは認知症への対応に 「生活療法一般」 が重要となった新時代を拓かなければならない。

参考

a. 中川恵一、「がんのひみつ」、学士会会報 No 880:106~118, 2010.
b. 柳沢勝彦、「認知症最新研究」、ibid No 920:76~85, 2016.
c. 西道隆臣 et al、アルツハイマー病 研究最前線、Newton March 24~57, 2017.
d. 新谷、「風桶」、福祉における安全管理 # 689, 2018.
e. 新谷、「鳥無き里の蝙蝠」、ibid # 695、2018.
f . 新谷、「棚ぼた七つとルーの法則」、ibid # 707, 2018.
g. Linda Marsa、Alzheimer’s Under Attack, Discover December 32~41, 2018.


職員の声

声1: わずか最近 50 年の死因経過で 結核→ 糖尿病→ 脳卒中→ 癌、更に→ 認知症 …. この流転 (るてん) に驚くばかりだ(答: 人の石頭 (いしあたま) は昔風で、認知症が結核のように治ると、まだ思っている)。

声2: 認知症の患者さんで 末期でありながら 律儀 に アリセプト を内服している方がある … フランスの服薬廃止とは夢のように異なる(答: 「サンタの教え」 を知れば、効かない薬は 「使っ、良くなかっ、効かなかっ」 と判るのにね)。

声3: 介護の方針を 「依存から自立」 へ変換したら、介護プランは変わるのか?(答: 要介護 4・ 5 の人達に自立を期待できるハズは無い … だからスエーデンは要介護 4・ 5 をつくらない)。

声4: 誰 しもが 長生き して 認知症になるのなら、老境に何の救いがあるのか?(答: 平家物語の冒頭 を想い出すね ―― 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す、おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし … )。
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
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