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(676) 介 護 期 間 を 縮 小 し た い け ど

(676) 介 護 期 間 を 短 縮 し た い け ど   
  
 厚労省やマスコミは 近年 「平均寿命」 はそのまま維持し、「介護寿命だけを短縮する方法」 を手探りしている。

♣ ここで寿命の定義を纏(まと)めておこう (図 1)。平均寿命とは 「出生時、あと何年生きられるか」 の平均値である … 死亡した人の平均寿命ではない。介護寿命 とは 「介護保険の指定」 を受けた人の寿命、および指定がなくても状態が同じならそれも含まれる。健康寿命 とは 「自立して日常生活を営む」 人の期間である。

介護期間を短縮したいけど

♣ 人は健康寿命で生涯を過ごした後 要介護寿命 に移り、その終点で世を去る、と設定される。図 1 は男女の各種寿命の相違を模式的に示したものである。

♣ 戦前は健康寿命が短くて 50 歳程度、その上 介護寿命なんて存在しなかったので、全寿命も 50 歳前後であった。今は健康寿命が 男 71 歳・ 女 74 歳に延び、その上 更に介護寿命が加わって、男 9 歳・ 女 12 歳ほどが上乗せになったのである。まるで別の人種の高齢寿命のような豪華さである !

♣ ところが人間はたいへん 欲張り であって、せっかく全寿命 (平均寿命) が世界一長いのだから、その終末にある要介護期間というケチな存在が “邪魔っけ” に感じられるのだった。

♣ もし 「入院」 日数なら、なるたけ減らしたいように、要介護期間 も 出来るだけ削りとって、それを健康寿命に繰り入れ、健康な期間を長くしたい―― つまり介護期間などに ご縁の少ない状態のまま ピンコロ で逝きたいと 人は願う。でも、今の高齢社会で 介護なしで逝くことが出来るだろうか?

♣ そこで健康寿命と介護寿命の関係を調べてみよう (図 2)。図は女性を代表として、最近の 12 年間の介護期間を ○ で囲んで示す。蘭の下の数値で示す健康寿命は少しずつ延びているが、その上に○で記載されている介護寿命は 12 年間の観察では ほとんど変わっていない … つまり、介護期間は不変で居座っている現実があるのだ。
介護期間を短縮したいけど

♣ この所見に対して、大抵の女性はこうおっしゃる:――いくら寿命が延びても 「健康」 でなければ価値がありません、と。つまり健康寿命の後に続く介護期間の 12 年間が 大変お気に召さないのだ。

♣ 介護期間を短縮できるかどうかが 今日の話題だが、ご存知のように、日本では 2000 年に介護保険が始まって以来 今で 19 年が経過――ずいぶん昔に終末を迎えたハズの高齢者が保険のお蔭で延伸した寿命を 今 享受されている。

♣ では諸外国ならどうか? 図 3 は日本と先進諸国の関係を示す。

介護寿命を縮小したいけど

♣ 見ると、「平均寿命」 は各国バラバラであるが、「健康寿命」 は およそ 71 歳で似通っている。71 歳 という所見は、皆 先進国から である以上、人類遺伝子の共通所見なのであろうか?同時に、この所見は、人口ピラミッドの観察で、死亡現象が系統的に始まる 「屈折年齢」の 70 歳にもよく符号している 1 ) 。70歳頃という年齢は、先進国における天然寿命の限度を示すのかも知れない。

♣ ところが「介護寿命 」(不健康な期間) は国によってバラバラだが、日本は有意に長い。日本女性は介護寿命が特に長く、全寿命も長い――つまり介護に力を入れる日本は全寿命も長くなると思われる。

♣ 全寿命が延びるためには 「健康寿命」 が延びることも同じく大事であるけれど、諸般の事情によって、「健康寿命」 は大幅に今より長く延びることは望み薄である 2 ) 。しかし人々の長命願望は著しく大きいから、介護寿命を長くせざるを得ないだろう。

♣ 因みに去年 パールでは、介護生活が 「19年間」 も続いた 98 歳の女性、同じく介護生活が 「17年間」 も続いた 108 歳の女性を経験したが、済んでしまえば 誰もこの長い介護生活を ウェルカム していた訳ではなかった。つまり介護寿命がバカ延びしても人々は呆 (あき) れるばかりだった。

♣ 逆に重症な 2 例では入所後 2 週間余りで世を去られ、ご家族の嘆きは只ものではなかった。つまり介護寿命と言えども、長過ぎるのも・ 短すぎるのも人々の心を繋ぎとめられないのである。これは ルーの法則 (Roux’s law)通りに、「過ぎたるも・ 不足なるも 丁度良きものに及ばず」 の結果なのである。

♣ 確かなことは、もし本気で長命を望むなら介護寿命を延ばすことが一番 的確なやり方であるが、果たしてそれが適正なことなのだろうか? 日本の 「延命第一主義」 の作意がここに影を落としてくるのではないか?

♣ 今日の話題は 「介護期間を短かくしたい」 ことであったが、介護保険の実務上の答なら、「介護期間の長短を人為的にいじるべからず」 という、なんだか変な ジレンマ に落ち着くことになった。これが まともな結論であって良いのだろうか?1825字

要約:  全寿命の末尾を飾る 「病気寿命」 を減らして 「健康寿命」 を長くしたいと誰しもが願う。 ところが 健康寿命というものは人類に共通な特性として 70 歳近辺 であって、これ以上 多くの年限を望めない。 したがって全寿命の延伸という念願を満たすためには 「病気寿命」 を 医療・介護によって延ばす以外の道はない ... でも、これでは病気寿命を減らしたいという希望と 矛盾 してしまう。やっぱり人間、観念することが必要だ !

参考: 1 ) 新谷:「屈折年齢と福祉」; 福祉における安全管理 # 579, 2016. 2 ) 新谷:「介護期間を短縮する」; ibid # 320, 2012.

職員の声

声1: 介護の目標は 「健康寿命」 を増やし 「介護寿命」 を減らす … 簡単なことではないか?(答: それが難しいのだ … 例えば タバコを止める・ 酒を控える・ 早寝早起きに徹するなど、健康寿命を増やす実践はほとんど非実現的。他方、健康寿命を減らす好き勝手な生活は一杯あるが、たいてい大叩きとなるよ ! )。

声2: 寝たきりでも生きていて欲しい、というのは 「家族のエゴ」 か?(答: もし私費のご生存なら、要介護 5 の 年間 500 ~ 900 万円の経費が掛かることを知れば、ご家族は黙ってしまうだろう)。

声3: 介護期間は日本女性で世界一長く、それを少々減らしても良いのでは?と言う意見もあるほどだ(答: 介護期間が短い、とは介護の手を抜く、に通じるものがあり、とても嫌がられる)。

声4:  健康寿命は 日本・ 欧米 でほぼ同じ 72 歳頃だと聞きビックリした … つまり全寿命が長いということは、健康寿命の後に来る 「介護寿命が長い」 ことに他ならず、少々ガッカリ だ(答: 人口 ピラミッドを眺めても、先進国は 70 歳頃から人口が減り始める 1 ) 。そこから先をどれだけ元気に生きるかが 「先進国の甲斐性」 なのである)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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