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(742) 安 息 の 心 と B. M. I.

(742) 安息の心 と B.M. I.

  私どもは 資料として 「入念な介護の記録」 を残す。その中から 毎月測定する入浴時の体重から割り出す「 体格指数 BM Iの経過図」 (図1)をお示しする。BM I とはBody Mass Index(体格指数)で、この値が 12 に近づくと、ふつう天寿の終点となる 1) 。私たちは、BM Iの経過図 が どんなに客観的な判断の支えになっていることか、を強く感じている。

安息の心とB.M.I.

♣ 図 2は死亡された代表的な 3 例を示す。図の一番上の症例は 95 歳女性、認知症、最初の 6 年間はやや肥満のまま 水平・ 安定 に経過、6 年目に誤嚥をなさった。その後 3 年に亙ってB.M.I.は低下、やっと回復、再び 「誤嚥」 を 3 回経験され、その都度 ご家族の希望で入院された。入院すれば点滴の生活だから、必ずB.M.I.は低下して行く(毎回 2.5 B.M.I程度)。

♣ その都度 体力のレベルは低下し、5 度目の誤嚥では ご家族はもう入院を希望されず、週余のちに他界された。お看取りに 「悩み」 は尽きない。しかし、ご本人とご家族で 「95歳、年余にわたる認知症」 と BM I ≒ 12 が一致するとき 1) 私どもは、そこに なにがしか “天寿の安息” を見出すことができる、と信じている。

♣ 2 番目の症例は 90 歳男性、認知症+左大腿骨・骨頭骨折。当初から B.M.I.= 16 の栄養欠乏だったが 2 年のうちに B.M.I. 18 の正常近くまで回復、そこで誤嚥された。直後から 1 年の経過で 直線的に降下、B.M.I.が 12 のレベルで他界された。
安息の心と B.M.I.

♣ 3 番目の症例は 99 歳女性、認知症+右大腿骨・骨頭骨折。入所時から痩せ細っておられ B.M .I.=14。しかし 2 年間は安定してお過ごしの 幸せ ところ 「誤嚥」、1 年かけて B.M.I. は危険域の 12 を割り込まれた。 99 歳でありながらも 不憫 (ふびん) に思われたご家族は 「胃瘻」 を選択、しかし 栄養回復の効果はなく、 1 年未満の羸痩 ( るいそう) のなかで世を去られた。

♣ これら 3 症例は 「誤嚥が源」 で体重が年余に亙って低下し続け、B.M.I.が危険域= 12に達した頃、死亡されたのである。

♣ そもそも医療というものは 「痛みを和らげる、怪我を治す」 ことからスタートしたのである。しかし 医療・ 看護 が発達し始め、その結果、平均年齢は 50 歳から、どんどん延びて、近年では 90 歳に近づいた。

♣ 「延命」 へ突き進んできた日本の医療が、今や 「どう治すのか」 から、 「超高齢者の命を どう終えさせるのか」 という 新しい難題に直面するに至った。

♣ 2000 年に 「介護保険」 がスタートしたのは 良いタイミングだったが、主力は あくまで 「介護」 であって 「治療」 ではない。ところが、人間の心は簡単に変えることはできず、「うちの親の命を延命して欲しい、一分でも一秒でも長く ...」 という声は、医療の現場と同じように多いものだ。

♣ こうなると、ご利用者を病院へ 救急搬送・ 心肺蘇生 の道に乗って頂くことになり、老衰・臨死のご本人も、ご家族も 塗炭 (とたん) の苦しみを味あわれてしまう。

♣ しかし、最近は 「老衰老人の命には限りがある」 という達観も世間へ徐々に浸透してきて、今や 「自分の最期は自分が決める」 となりつつある。パールでは 早い時期 全例に 「Informed Consent」 (説明と同意の書) を取りまとめる。

♣ その時に、 「① 不安のため 病院受診を希望 しますか? 経口摂取が不可能になったとき胃瘻をつけますか? 緊急搬送を望みますか?」 の 3 点 をご家族との会話で十分に話し合ったうえで希望を書面に書き留める。

♣ 日本の 「特養」 の態勢はスエーデンと同じであり、酸素投与や点滴などの設備は備えていない。消えて行く命の将来 (予後) は決め難いものである。しかし上記でご覧のように、B.M.I. のチャートに 「 12 」 という数が現われれば、亡くなることの 必然性 が はっきりと 何ヶ月も事前に 見えて来る

♣ パールでは この成績を以って、安息の心 をご家族と分かち合う習慣が確立し、終末の混乱を和らげることに大きく寄与しているのである。1970字  

要約:  天寿の終点が B.M.I. = 12 であった 3 症例を提示した。 日本の医療が、今や 「どう治すのか」 から、 「どう命を終えさせるのか」 という 新しい難題に直面するに至ったことを概観した。 容易に測定できる B.M.I. の方法により、お看取りのチャンスを事前に確保できる経緯を説明した。

参考: 1 ) 新谷: 「天寿の終点は BM I = 12.0 」; 福祉における安全管理 # 33, 2010.  

職員の声

声 1 : BM I のチャート (図) で、あとどのくらい生存できるかが推定できるとは凄い事だ(答: BM I が 12 に至る経過がそれを教えてくれる――私ども、従来 20 年間の経験で BM I = 11 が 3 症例あったが、例外なく亡くなった)。

声2 : BM I = 12 が生死の境 1 ) とは初めて聞く … 食べられないから親に胃瘻を付けて、なお衰弱状況が続くのを不憫 (ふびん) に思うご家族の心境は如何ばかりだろう?(答: 昔 親は自宅で亡くなり、その理 (ことわり) は家族に自覚されたものだった … ところが今は他人任せの親の運命、傍でただ オロオロ して自分の意見を持つ余裕に乏しい)。

声3 : 施設は延命しなかったことを理由に 刑事責任 を問われることもある(答: 人間 いつかは死にます、超高齢者は特に簡単に … ある 99 歳の女性、老衰の極みに BM I が 12 を割り込んで 、不憫 (ふびん) に思ったご家族が胃瘻を希望、設置されたが 間もなく世を去られた … ご本人もご家族も安息のひと時も無かったようだった)。

声4 :  ご本人の安息が得られるような確実な方法はないものか?(答: 認知症の末期では 「記憶と見当識」 (時・ 所・ 人) が失われており、本人への配慮 というよりも むしろご家族の安息に役立つことを考えるのが適切ではないか)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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