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(744) ロ コ モ と ロ コ ト レ

 (744) ロ コ モ と ロ コ ト レ

 耳慣れない 「ロコモ」 とは 「運動器障害」 という意味、英語の 「ロコモーティブ」 の日本式省略語である。

♣ 介護の世界で 「運動器」 と言えば、身体の運動を支配する 「筋肉・ 骨・ 関節」 を意味する。ロコモの意味は 「場所」、モーティブの意味は 「移動」 … つまり 「場所が移動する」 ということだ。

♣ 「ロコモーティブ」 を辞書で引けば 「蒸気機関車」 と出ている。19 世紀の初頭、イギリスで蒸気機関車が発明されたとき、それを見て人々は驚き ビックリした ―― あの巨大で真っ黒な機械が、勢いよく蒸気を吐いて移動している … モノが動いているのではなく、まるで 「大きな場所」 が移動している ! という印象であった (図 1)。つまり 「蒸気を吐く移動物体」 (steam locomotive)だったのである。「病気のロコモ」 はその名前を頂いた。

ロコモとロコトレ

♣ 人間の体が動くときに骨や筋肉が働いているのは分かり切っているが、ヒトも更年期を過ぎると筋肉や関節の故障を経験するようになるから、元気なときの有難味は筆舌 (ひつぜつ) に尽くしがたい。

♣ 「ワシが不自由なのは骨や関節だけではない、あの大きな機関車にも相当する身体の動かし方 (移動) が故障しているんジャ …」 と思えば、何か立派な名称を工夫してあげたいだろう。それが 「運動器 という名称」 であり、広く 「骨・ 関節・ 筋肉」 などを総称する。また、臨床的にそこの故障のことを 「ロコモ」 と略称して、身近な名前として採用したのである。

ロコモとロコトレ

図 2 をご覧あれ。更年期までは筋肉が故障するなんて夢考えることはないだろうが、実際に筋肉は齢とともに誰でも痩せてくるものなのだ ―― これを 「サルコ と呼ぶ。サルコ とは 「サルコ (筋肉) ペニア (衰え」 の日本式省略語である。つまり、運動器障害 (ロコモ) は主に骨にくっついた筋肉と関節の 機能低下 を表す。

♣ 筋肉は 30 歳を越えると衰えてくる。スポーツマンは 30 歳を越えると 運動がきつくなるので想像がつくだろう。しかも、それも全身均等ではなく、下肢、特に 膝上の大きな筋肉: 「大腿直筋」 の衰えが目立つ。みなさん 「畳での座位から立ち上がるとき」、腕の助けなしで それをやってみなさい ーー 足の力が弱くなったことが たちまちばれますよ。

図 2 でみると、筋肉量は 50 歳でマイナス 10 %、70 歳でマイナス 20 %、100 歳でマイナス 50 %といった具合だ。私はパールの施設を造るとき、お年寄りは 畳が好き、と信じて運動広場の傍に 20 畳ほどの畳場を用意した … 体操の後で疲れたり、昼食後の昼寝に利用されるだろう。ところが、実際には 只の一人も 畳場が使わることはなかった ―― と言うより彼らは畳を嫌っていた。

♣ 尋ねてみると返事はこうだ:―― 「畳で寝たら一人では起きられない、起きることができても助けて貰わないと立てない」 と。私は、老人とはそんなものだとは気付かず、迂闊 (うかつ) だったのだ。

♣ 考えてみれば、お年寄りは移動に際して 「ヨッコラショ ! 」 の合い言葉が付き物であり、椅子から立つのも座るのも掛け声付きだ。それほど、高齢者は 若者が気付かない程 いつのまにか筋肉が減り、運動器全体が衰えて行くのである。例えば、上腕二頭筋 (いわゆる力瘤の筋肉) が 「すりこ木 (ぎ) 」 の太さから 「ロウソク」 のように細くなって行くのだ。

♣ わが国では近年の高齢化に伴い、ロコモ疾患が急増している。目立つものは 腰椎症 (3,500万人)、膝関節症 (2,500万人)、大腿骨粗鬆症 (1,000万人)などであり、人口の過半数の人々で、腰の障害 と 歩行・ 立ち座り などの移動機能が障害されている。これが ロコモ である。

ロコモとロコトレ

図 3 を、声を出して読んで欲しい。これは 「ロコチェック」 の表と呼ばれ、7 っ の項目中、あなたは思い当たる症状があるか?ただの一つでも該当するものがあれば、あなたは 「ロコモ」 のお仲間入りなのである。

♣ ロコモの対策としては、ロコモーション・ トレーニング(略して ロコトレ が推奨される。パールでは、すでにデイサービスで毎日のように行われている ロコトレ であるが、その主要内容はバランス能力に重点を置く 二つの訓練 より成る:―― ① 開眼片足立ち、② スクワット 、の二つだ ( 図 4 )。

♣ この二つの操作が高齢者での運動機能改善効果は証明済みである。この二つのロコトレは簡便な操作であり、長期間継続するのに適したトレーニングと言えるだろう。

ロコモとロコトレ
♣ わが国では平均寿命が延びて行く中、その一部である 「健康寿命」 の延びがイマイチであり、老人は 日常生活の動作に いちいち人手を求めたがる。ロコモは メタボ・ 認知症 と並ぶ健康寿命を短くする原因でもあるから、 今後ロコモ対策が、究極の目標である健康寿命の延伸に繋がることが期待されている。1832字  

要約:  ロコモとは 骨・ 筋肉・ 関節 の老人性機能障害の総称である。 ロコモは年齢性の筋肉萎縮に強く依存するが、同時に 関節症・ 骨粗鬆症 にも関連が深い。 ロコモは年齢性の障害であるから、完全に避けることは出来ないが、対策として バランス維持を保持する 「開眼片足立ち・ スクワット」 が有用であることを示した。

職員の声

声 1: 畳を嫌うどころか、畳の上を歩くことさえ嫌がる老人もいる(答: こんな用心深いお年寄りなら、常習性の “転倒・ 転落” にも気を付ける必要がある)。

声 2: いつの間にか お寺さま でも椅子を使うようになり、これは 「ロコトレ」 なのか?(答: 全く同感、昔の門衆は中年が主力だったが、今 お寺に集まる人たちは 超高齢者 が多く、畳の間に座ることは事実上 不可能な時代になった)。

声 3: 高齢者には ホドホド の体操が必要で、① やり過ぎも ② やりな過ぎもダメ ! (答: ルーの法則が述べる通りで、 ① ② はダメだが ③ 丁度よい体操が望ましい … ところが ③ が一番難しい現実 ! )。

声 4: 今のご時勢、65 歳以上の高齢者の過半数が 「ロコ」 の訴えを持っているとは ! (答: 自動車でいうと、走るぶんには差支えがないものの、あちこちに不具合が生じている … 人生 50 年と言われているが、今は長生きの時代、昔にはなかったトラブルを持ちながら我々は生きているんだ)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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