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(757) 老 衰 と は ?

(757) 老衰とは?   

今日は皆さん方がきっと興味をお持ちになる 「死亡時の診断名」 について考える。

♣ 今から 65 年前まで、日本人の死亡順位の第一位は 「結核」、第二位は 「栄養失調」 だった: 今で言えば、開発途上国並みの病気で日本人は死んでいたのだ。

♣ その わずか 30 年後の死因順序は 一位からの順で ガン ➞ 心臓病 ➞ 脳卒中 ➞ 肺炎 ➞ 老衰 ➞自殺 . . となった(図 1)。 このうち、65 歳以上だけで統計を取ると、「第一位は肺炎」 である … お年寄りは 「肺炎」 で死ぬと思われた。

老衰とは?

♣ パールでお看取りした方々の病名は ほとんどが 初期は 「心不全」 だった。上記の分類によると “心疾患” となる。しかし、実態は決して心疾患ではなく、無限に 「老衰死」 に近いものだった。では、森繁久弥 (もりしげ ひさや) 氏( 96 歳)・ 日野原重明氏 (105歳) のように高齢の有名人の病名がナゼ 「老衰」 とならなかったのか?

♣ 高齢というだけで ご逝去の理由は乏しいのだろうか? 死亡診断書の病名は、死亡と因果関係が深いものが求められるが、その他に国民衛生の強化のために有用な情報となる病名も必要とされる。「老衰」 の診断だけでは病気なのかどうなのか、国民はあまり参考になると感じないようだ。その訳の一例 …

♣ 以前、東京都は都立老人病院付属施設で 身寄りのない貧困なお年寄りを引き取り、亡くなるまで無料でお世話をした。福祉目的だったが、死後の 病理解剖 をお願いしていた。つまり、お年寄りはどんな病気で死ぬのかを、100 % キチンと研究した訳である。

♣ 病理解剖によって 臨床診断 だけより ずっと正確な病気の診断が可能となり、市中の不確かな 「老衰」 という診断を排除できると期待された。

♣ ところが、あにはからんや、2 % 程度の例で 「老衰」 としか言いようのない症例が明らかになり、頭を抱えこむ事態になった、という。つまり 「老衰」 という実態の存在を認めざるを得なかったのである。

♣ しかし 「老衰」 の 「老」 とは、何歳を念頭に置けばよいのか?昔は還暦 60 歳を迎えて中風や癌になって死ねば 「老衰」 で文句なく通っていた。しかし、今は超高齢社会であり、医療も進歩しているので、たとえ超高齢者であっても正確な 「死因」 が求められている。

♣ 老衰とは 「ロウソクの灯」 が徐々に消えていくようなものである … 体の中のエネルギーをもはや燃やす力がない、という意味であろう。老衰には 二つの種類 がある: 常識的に 超高齢である場合、 慢性的に体格指数 (B.M.I.) が 12 近辺まで痩せ衰えて行く場合。

図 2 は認知症例の B.M.I. 経過記録である。上段の例は 94 歳女性、6 年間平穏で、誤嚥性肺炎をきっかけに 1 年かけて体重低下・ 死亡――老人施設ではよく見かける B.M.I. 形態であり、診断は 「老衰ではなく誤嚥性肺炎」 となる。下段の例は 96 歳女性、8 年掛けて極めて徐々に体重が減少し続け、B.M.I. が確実に死亡域の 12 になっても死に辛かった慢性の例を示し、こちらは 「典型的な老衰」 なのである。

老衰とは?

超高齢の場合については、死亡診断名を肺炎だの心不全だのと書かれると、若い人の本当の病気と間違えられる――高齢者の場合、若者と違って死亡原因名は同時に複数あるのが常で、その序列を決める意味は薄い。 の B.M.I. 低下は体力消耗の一形態であって、老人であれば堂々と 「老衰」 を代表する――この場合は診るべき問題は少ない上、診断エラーも極めて少ない。

♣ さて、上記の 死因病名は、みな 「内科担当」 という特徴がある。つまり、人が高齢で 「死ねる」 病気の範囲は、十種類くらいしかなく 、それらから外れると 法律的に “それ、本当なの?” と思う診断名になる。

♣ だから 「十種類の死因」 うちの ”どれか一つ” を 「「診断」するのではなく、単に忖度 (そんたく) して 「選ぶ」 だけになる。だって、眼科 や 皮膚科 の病名では、事実上死ねないだろう。 最終死因は 「癌・ 心・ 肺・ 脳」 などに限られてしまうが、それは一部 真実であろうけれど 訳の分からない診断名に分散されるのだ。なぜか すごく頻度の多い 「認知症」 も 細かく分類されて 「脳・ 心・ 肺」 疾患とされ、元のアルツハイマー型という存在は 影も形も無くなってしまい、国民に誤った疾病意識を与えている。

♣ また 病院での 「老衰」 ならば、世間様は “検査など手を尽くした後の病名だろう” と思って、疑わない。しかし、家庭や施設で 「老衰」 ならば、“手抜 (てぬ) かりがあったのではないか?” と不審の念を抱かれることもあるし、検察の目もある。まだ日本の社会は成熟していず、家族が家庭で看取ることに問題を抱えているのだ。

♣ パール独自の研究で、「体格指数 (B.M.I.) の経過が徐々に 12 に近づく」 という臨床背景 1~2 ) も非常に有益である (図 2) 。 B.M.I.法 によると、多くの 「老衰死」 は 誤嚥性肺炎 がきっかけで、「飲めず食べれず」 の老衰効果に至ることが判ってきた。

♣ 北欧では 「老衰」 よりも 直接的な 「アルツハイマー病」 の診断が多いようだが、これらと 「誤嚥性肺炎」 の計三つの診断は 兄弟姉妹 のような関係であり、いずれを筆頭にするか迷う事が多い。

♣ 老衰とは、さびしい言葉だが、ほんとに さわやかな たたずまいの老衰を目にすると、哀れながらも 静かな幸せ が感じられてくる。 1965字  

老衰とは?

要約:  厚労省の発表する死因別診断名は上から順に 「癌・ 心疾患・ 肺疾患・ 脳疾患…」 となっている。 癌の診断は相当に的確であろうが、それ以外の診断は必ずしも当を得ていず、診断者による個人差が大きい。 昔と違って、9 割以上の死亡が高齢者で占められている現在 (図 3)、近代的な診断名としての 「老衰」 の意義が適切になりつつある。

参考: 1) 新谷: 「天寿の終点は B.M.I. = 12.0 」; 福祉の安全管理 # 33 , 2010. 2) 新谷: 「BMI から見る生と死のはざま」 ; 老人研究 31 :13 ~ 23, 2010 (パールのホームページ—— {社会福祉法人パール} を呼び出し、“ふじひろのページ” をクリックして見ることができる)。 十種類の病名とは:--癌・心疾患・肺炎・脳血管疾患・誤嚥性肺炎・老衰・事故・自殺・腎不全・COPDなど。
 


職員の声

声 1: 「老衰」 とは明瞭な病気が無くても亡くなられたという意味だから、ご本人は凄い生命力だった訳だ (答: 戦後のひととき、「老衰という診断は 医学の敗北だ」 と息巻かれ、老衰と言う病名が毛嫌いされた時代もあったが、今や 「老衰」 は大長命の正規シンボルとなった)。

声2: 「老衰」 で亡くなっても つまり 「何の病気だったのですか?」 と訊ねられるし、何かしらの病名が付くんでしょう?(答: 同じ 「肺炎」 であっても、老人の場合なら 「誤嚥性肺炎」 の事で老人特有、「肺炎球菌性肺炎」 なら 若少時 に特有、全く別な病気がゴチャマゼにされている)。

声3: 本文に示された死亡原因の統計図、これには年齢が加味されているのか?(答: 全くされていない … 全死亡者の統計図である … もし高齢者老人だけで集計すれば、老衰 70% ・ 癌 10 % ・ 事故 10% などと、大幅な変更となるだろう)。

声4: 老人の余命は B.M.I. (体格指数)が 12 に近づく過程によく反映され、ご家族にも説明しやすく、又自然死を受け入れやすくなる(答:ご家族に B.M.I. の経過図をお見せすると、ほとんどの方が自然死の実態を理解、納得される)。

参考:--
  「ガン」 の死因の半分を占める 「心疾患」 という統計は明らかに事実ではない。意外かもしれないが、心臓が直接死因であるためには ほぼ 「急性心筋梗塞・ 心筋症・ 悪性不整脈」 だけであって、その数は 「老衰」 よりずっと少ない。心不全を言うのであれば、それは 「左心不全」 のハズであり、必ず 「起坐呼吸・ 聴診器で第 3 心音の聴取」 が必発であるが、そんな観察を見ることはまず稀なのだ。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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