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(767) 人 は こ け る

(767) 人 は こ け る

 今から 320万年まえ、アフリカで人類 初の女性が生まれた;名前は “ルーシー” 。

♣ なぜ “初” と判るのか?それは彼女が 二足歩行用の骨盤を持っていたからである。サルは移動時には四足歩行だが、ヒトは二足歩行だ。二足歩行によって、手が器用になり 大脳が発達し、人類の文明・ 文化に繋がった、と言われる。しかし残念 ! 二足歩行の欠点には 「転倒の発生」 があったのだ。

♣ 10月10日は テントウ と読む ことができる。そこで 「日本転倒予防学会」 が このゴロ合わせで 2004 年10月10 日 を 「転倒予防の日」 と決めた。以後、毎年 各地で二足歩行の唯一の欠点である 「 転倒を予防・ 研究する会」 が催されるようになった。今日は 10月10日を前にして、この話題を取り上げてみよう。

♣ すでにパールの安全管理でも 多数のアイテムが出典されている。まず 「日本天国論」 からスタートしてみる。日本は天国である、なぜなら この 74 年間 戦死者がゼロ、 体重を減らすことにお金を掛けられる、平均年齢が世界一、介護保険が世界無比で充実 . . . 。

♣ 次に 「日本地獄論」 : ④ 軍隊がないために、他国にもてあそばれる、 “スマホ”が普及するにつれ、子供たちが遊び回る、 物価が高く、生活が苦しい、 親が長生きで、介護に苦労する、 その割に高齢者の転倒・ 骨折は増え続け、誤嚥性肺炎・ 胃瘻 などの問題が山積みである . . . アー ! 天国 イクオール 地獄 である !!

♣では、ナゼ転倒はおこるのか?人は誰しもミスをしようとしてミスをするのではない。人と動作の接点があれば、ある確率でミスは発生する。例えば、パールの「 ヒヤリハット・レポート」 で 20 年間を通して、常に第一位 ( 70 % ) の案件は 「転落・ 転倒」 なのである。

♣ ミスが発生する状況に注意を向けてみると、(イ) 介護職員、(ロ) 介護をする場、(ハ) 介護システムそのもの、の三つに分けられる。もし失敗が、ある特定の職員に集中するのなら (イ) が問われ、また在宅サービスとか特養に集中するのなら (ロ) が問題となる。

♣ しかし、失敗報告書を見ると 「同じようなミスの繰り返しが多く、あまり改善・ 進歩の様子が見えてこない」 ようだ。このことは、失敗 (= 転倒)に対して正常なフィードバックができていない事を示しており、問題が (ハ) のシステムにある と思われてならない。

♣ お皿を洗えば いつかは割れる; 車は衝突する; 飛行機は落ちる; これらと同じように、お年寄りを預かれば、転倒事故がないはずがない; これはシステムの持つ確率 (高齢女性の二足歩行) に依存するようである。もし幾つかの選択肢があれば、人は必ず一番 悪い選択肢を選ぶ傾向がある、という冗談めいた指摘もあり、これは 「マーフィーの法則」 として知られている。

♣ 転倒が転倒だけで終われば 日常生活のアクセントとみなすこともできようが、問題は転倒が誘発する 「骨折」 、なかんずく 「大腿骨頸部骨折」 だ。ある報告によると 、全国調査での推計値であるが、一年間に 「頸部骨折」 を起こす頻度は、70 歳代の女性の 0.41 %、80 歳代で 1.48 %、90 歳代で 2.81 %である。

♣ 「頸部骨折」 を起こす一年間に 「頸部骨折」 を起こす 90 歳代は約 100万 人いるので、骨折は毎年 2.8 万人発生という計算だ。つまり高齢の女性を預かれば、「お覚悟を ! 」 と申し上げるほかはない。ところが 特養でお預かりする方の約半数は この年齢層の女性なのだ。

♣ そこで、私は 「六つのべからず」 という警鐘を鳴らしたので、ここで、おさらい したいと思う:(A) 急がずべからず (急がせたら 転倒・骨折) 、(B) 後ろから声を掛けるべからず (お年寄りは、振り向きざまに転倒・骨折) 、(C) まさか ! と思うべからず (待っててね、と念を押したのに、戻ってみると転倒・骨折 ! )

♣ (D) 外(ほか)で他者に呼ばれても、持ち場を離れるべからず (気を利かせて呼ばれた方に行き 助け、持ち場に帰ってみると 転倒・骨折 ! )、(E) 押し問答すべからず (トイレ内で 理を説き、分かってもらえたと思ったら、転倒・骨折) 、(F)日頃は 「杖歩行」 であっても、気を許すべからず (安心して見ていると 杖に足をからませて転倒・骨折)。

♣ 320 万年前の “ルーシー” も転倒しただろうか?たぶん、しなかっただろう。なぜって、彼女は 80 歳まで生きなかったからだ。今の人間でも 遺伝子天寿の 50 歳までなら、転倒しても “絶対に” 骨折には至らない。問題はだから、転倒だけでなく、如何せん、長寿と骨粗鬆症にあるのだ。

要約:  二足歩行は必ず転倒する、 90 歳を越えた女性は 「お皿のようなもの」 、こけたら 割れる !   もし割れたら 誠意をもって対処すること !  あなたの人格が見えてくる!! 1913字

職員の声

声1: 特養に転倒は付き物である(答: ヒヤリハット・レポート で 転倒報告の頻度が 当日報告の 7 割に及ぶことがある…. しかも改善の努力は実を結ばない.....転倒は単独行動の時に限って発生するから だろうか)。

声2: 高齢者は自分の骨が弱くなっていることを理解しているのか?(答: 話題の教育はなされているけれど、普段は無関心、転倒・骨折した後 勉強してやっと理解するありさま)。

声3: 転倒には 効果的な教育が定着しにくいうえ、重力に逆らう 二足 に依存するだけでは不十分なのだろう(答: たかが 「転倒」 、されど 「転倒予防学会」 という大げさな学会まである …. しかし、パールのヒヤリハット・レポートを見ると 開業の 20 年前と比べてほとんど転倒改善の傾向がみられない)。

声4: いつの間にか 「手すり」 のお世話になる….他人さまは転倒するが、残念ながら自分だって転倒はあり得るのだ(答: 初めて転倒した時は “まさか自分が….” とその前後を覚えていないくらい悔しいのである)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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