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(772) 笑 い の 寿 命

(772) 笑 い の 寿 命

え? 笑いに寿命ってあるんですか? ----- ええ、あるんです: だって赤ちゃんは生後三ヶ月くらいで笑い出すし、人は 90 歳くらいで笑わなくなるでしょう?----- 言われてみると、なるほど 笑いには寿命があるんだナー!

♣ 「笑い」 は生理学的な現象であるが、ふつう 「社会心理学」 でも よく取り扱われる。

♣ 「 笑い」 は人間の問題であるが、同時に動物の問題でもある。確かに、犬や猫は笑わない。ところが猿 (チンパンジー、オランウータン) は笑う。人が猿と分かれた進化の始まりが約 600 万年前であるが、人と猿は、それ以来、ずっと笑い続けているという。笑いはその人の元気さを表す指標でもあり、600 万年もの昔から笑いが続いたことは人類発展の基礎になったのだろう (図 1)。

♣ 今から 500 年まえ、コペルニクスは 「天動説」 を否定し 「地動説」 を採用した。このコペルニクスには 「コペルニクス原理」 がある;つまり “我々は特別な存在ではない” というものだ (We are not special)。それまでは、「人間という生き物は特別」 であり、神の思し召しが深い存在である ―― 笑うこともそうなのだ、と信じてこられた。

♣ 今では、地球は太陽の周りを公転する 「普通の惑星」 であるし、その太陽も銀河系の中で特に目立った星でもない。万物は流転、盛者も必衰である。さらに 「長生きする現象の物差し」 として 「笑いが続く年限は 100 万年」 というアイディアも紹介された

♣ コペルニクスは 「ある現象が長期に亙って存続すれば、数学的な処置によって、その現象が今後どれだけ長く存続できるか」 を考えた。その計算処置の基本は 「歴史の長い現象は、生き残りも長い」 ということである。たとえば、インターネットの歴史は今 20 年あまり続いたので、その存続寿命は 90 年以内と計算される、という。

♣ 野球は 150 年ほどの歴史であるけれど、2000 年後には野球寿命は終わっており、別な形のスポーツになっているだろう、と計算する。このような計算で 「笑い」 は今後どれくらい続くのか?「笑い」 はすでに 600 万年の歴史がある … だからあと 100 万年後になっても笑いはずっと続いているだろう、と計算する。

♣ ここでの問題は 笑いと年齢の関係だ。子供たちは ちょっとした事でも笑うけれど、歳とともに笑わなくなるような気がする。15 歳 ± 5 歳の女の子は “箸が転んでも笑う” と言うほど笑い上戸 (じょうこ) だ。逆に、教育が厳しい時代には 「若い男は白い歯を絶対 人に見せてはならぬ」 と躾けられたものである。

♣ ところがこれに対して私の知っている、ある高名な病院の院長先生、75 歳。その年の忘年会で、若者たちが披露する 「お笑い劇」 を一番まえの席で見ておられた。彼はふと隣の人に言葉をもらしていた: 皆はこの劇を見て笑うが、私には何がおかしいのか、さっぱりわからない、と (図2)。

♣ 人は歳を取って偉くなると一般に笑って頂くことが難しくなる。つまり 「笑いの寿命」 を卒業するのだ。だがこの院長先生、実は半年後に 「正常圧水頭症」 のため、職から退いてしまわれた。水頭症とは一種の認知症状態で、大脳細胞が変性してくるので、抽象的な笑いが理解できなくなる。つまり、笑いが分かるためには、健全な大脳細胞が必要なのである。

♣ あなたの観察で、認知症の方々は、どの程度に笑っておられるか? 要介護 3 あたりでは笑う人もあるが、要介護 5 になると まず笑って頂けない。それは認知症の進行に応じて大脳細胞が減るので、可笑しさが分からなくなるからだ。

♣ しかし不思議なことに、精神疾患では一般に 笑わないくせに 怒ることはできるのだ。その一例の物語:――パールの特養で宝とされる長老の Y 様、104 歳のお婆ちゃま。この方はいつも怒ってばかり、人に当たって揉め事を起こしていた。ところが、先月の 「お化粧と撮影の会」 に出席し、専門家に特別のお化粧を施されると満面のほほ笑みを披露され、周りの人たちを 唖然 とさせた ―― 環境が変われば、怒りも笑いに変わることの証明になった。

♣ あなたがお世話しているご利用者は、まだ笑っておられるか? 笑いは、その方の元気さを測る 「ものさし」 になり、また確かなケア遂行の潤滑油にもなる。1734字

要約: 

人間は 「笑う」 ことのできる 「特別な」 存在である。笑いは赤ちゃんからスタートし、青年期には大笑いするが、一般に年を取ると笑いは少なくなる。 笑いの歴史は 300 万年以上あるので、コペルニクスは笑いの寿命が今後 100 万年以上続くと推論した。 笑っていた 75 歳の男性が笑わなくなった例は水頭症による認知機能が落ちたからであった。怒ってばかりいた 104 歳のお婆さんが笑い始めたのは 立派なお化粧を施して貰ったからであった。 笑いの寿命は 何百万 年もあるが、その基礎は健全な大脳細胞があるからである。

 参考: Why Laughing Matters. Jim Holt in Discover 7:67, ’08.

職員の声

声:1 要介護 3 のある利用者、箸が転んでも笑います、要介護 5 の別な方 ... 笑いません、私自身は笑うことを心掛けている(答: 笑いの観点から利用者の心を見つめることができる)。

声2: 認知症で笑いが減ることは大脳に ダメッジ が溜まった指標になるのか?(答: ダメッジ が溜まるのではなく、大脳の細胞数が減っていることの指標になるのだ)。

声3: 怒っている人に対して 「お元気ですね」 と対応できる自分でいたい(答: 気を付けて対応しよう … 怒ることは動物でもできるが、笑うことはできない。人間は怒っていても笑顔で対応すると 相手は拍子抜けして笑顔になる)。

声4: パソコンばかりを見ていると 誰もが怖い顔をしている(答: 振り返ってその気で観察すると 確かにそう … すくなくとも 「無表情」 だね、相手 (パソコン)が怒りも笑いもしない物体だから その表情を貰い受けるのだろう)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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