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(773) " S o r r y " 法

Sorry ( ソ リ ー )” 法 ( ほ う )
 
電車やバスが急停車して他人の足を踏んずけた場合、あなたは 「あ、すみません; ごめんなさい」 などと、とりあえず謝るだろう。そう言うのは社会的なエチケットであり、人間関係を解きほぐす潤滑油になると思う気持ちがあるからだ。

♣ 私は一家 5 人で アメリカ・ クリーブランド・ オハイオ に 2 年間住んでいたことがある。住んでいた家の前の道路はほぼ 3 車線くらいの幅があり、ゆるやかに傾斜していた。道から家に向かって 2 メートル程度の芝生スペースがあり、さらに 2 メートル幅の舗装された歩道があって、そこから家の敷地が始まる … 普通の住居区域であったが なにせ土地が広いアメリカ、日本では考えにくい広さなのであった。

♣ 家の裏庭には高い木が 2 本あり、小 5 の長男と近所の友達が枝に登ったり ぶら下がって遊んだりしていたが、さっそくお隣の親切なノ リスおばさん が訪ねてきて注意された:―― たとえ子供たちが楽しんでいても 万一枝から落ちて怪我でもさせたら、戸主のあなたが医療責任を負わねばならず、子供たちの木の遊びは禁止しなさい、とのこと。うーん、厳しいけれど 日本でも聞いたことがある警告だな。

♣ 雪が降ったある朝、家の前の歩道は真っ白で 冬のムードいっぱい。さっそく ノリスおばさん がドアをノックする:――アメリカでは家の前の歩道で雪に滑って怪我をする人が出たら、あなたの責任を問われる…すぐ “雪かき” をしておきなさい。うーん、たしかに歩道はゆるく傾斜しているからその必要はあるわな。このようにお隣のノリスおばさんは気を利かしてよくアドバイスをしてくださったものだ。

♣ しかし、ビジネスの中では慎重になって、なかなかそれを言えないことがある。

♣ 特に医療・看護・介護の中では 「禁句!」 とされている。つまり、滅多のことで “I am sorry! ” と言ってはいけないのだ。もし、それを言うと、後で裁判になったとき、「”I am sorry! ” と言って自分の非を認めたではないか」 と反撃されるかもしれないからだ。

♣ 西洋流の考え方だが、人にサービスをする職業を 「プロフェッション」 と言い、神職・ 司法職・ 医療職がある。これらの人たちは仕事の中で 「ごめんなさい」 は許されない 厳しい現実がある。

♣ しかし、何がなんでも謝らないという社会は、考えただけでも息苦しいことだ。とくに最近の 「医療訴訟」 で、「もし、医師が誠実に謝ってくれたら訴訟までには行かなかった」 と言う声が増えてきた。時代が変わって来つつあるのだろう。

♣ アメリカは “I am sorry! ” を絶対言うな!という社会だったが、このところ考えが変わってきた。1986 年にマサチューセッツ州で施行された 「Sorry 法」、別名 「アイムソーリー法」 と呼ばれる法律があり、現在では 36 州で施行されている。

♣ この法律は、医療事故が起きた場合に医師が謝ってもそれが訴訟時に不利にならない、というものだ。もっと率直に “I’m sorry!” と言おうではないか、という法律だ。航空機事故でも同じこと ―― 航空機事故は 「事の顛末」 と 「責任関係」 は全く切り離され処理されている。

♣ 昔、福島県の 「大野病院・ 産婦死亡事件」 の判決があり、「有罪」 が 結局 「無罪」 となった。内容的に 「無罪」 は納得であるが、私はきっと 「謝り方の不手際」 があったのではないか?と危ぶんでいた。事故に際して、「力及ばなくて申し訳ありません」 の一言は必要だったのではないだろうか。

♣ 仕事の内容上、「ごめんなさい」 とは、なかなか言えなかっただろうが、それに代わる真摯( しんし) な説明と心の交流があって然るべきだったと思われる。加藤医師は、昔風に 「決して謝るな!」を 実行したに違いない。

♣ 時代は変わりつつある。「Sorry法」 は、まだ日本の法律になっていない。しかし、「力及ばなくて申し訳ありません」 の一言は、これからも大事だと思う。

♣ 福祉の世界で現実的に一番怖いのは 「転倒・ 骨折」 である。高齢者の 転倒・骨折 のほとんどは 「個人行動中」 で 予防は不可避かも知れないが、それから逃げる訳にも行かない。すなおに謝ることから始めて、あなたが 誠心誠意 を表すことが大事だろう。

♣ そのさい、言質 (げんち) を取られるとか、責めたり責められたりのないように、正しい観察が大事となる。1757字

要約: 悪意の全くない環境であっても、他人に迷惑がかかると 詰問・ 訴訟 されることがある。 うかつに 「ごめんなさい ! 」 と謝れば、問題がややこしくなることを避けるために、アメリカでは 「ソリー法」 が設定され、心のトラブルを避ける道が開けた。 「ソリー法」 は日本の法律ではないが、素直な 「ごめんなさい ! 」 が通じるような 医療・ 介護環境 はとても望ましいことである。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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