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(776) 光 加 齢

 (776) 光 加 齢

  皆さん、いきなりながら質問 、 「ヒトはなぜ死ぬのだろう?」。

♣ この問に対して、どんな哲学者や宗教家も、まともな答えを出していない。元・慶応大学医学部の生理学者 「林 髞」 ( たかし) 先生 (ペン・ネーム: 木々高太郎) は、こうおっしゃった: 「ヒトは死ぬ、なぜなら 死ななかったヒトはいないからである」。この答えは、逆説的ながら、実際には真理を衝いていると思う。

♣ 次の質問、 「ヒトはなぜ生まれるのか?」 の答えは簡単だ:精子と卵子が結合するからである。人生にとって、質問 ① と ② で、どちらが味わい深いだろうか? ① ではないか。

♣ 前回のケアカンファで 「過洗浄」 (かせんじょう) について説明をした。つまり、ヒトの肌細胞は一生に 55 回程度しか再生しない。私どもは 55 回分の肌細胞の回数券を持っているようなものであって、あまりゴシゴシ肌を洗うと、早めに回数券を使い切り、肌はサランラップのように “薄くて弱く” なってしまう。

♣ これは確かに在宅介護でよく見るご利用者のお肌はピカピカで、驚くことがあり、実感できる。今日は、 “ゴシゴシ洗い” に加えて 「光加齢」 の話題を提供しよう。光はフォト(photo) 、加齢はエイジング (aging)、合わせて Photo-agingと呼ぶ。

♣ パールにご入所の方々は、お顔を拝見する限り、それなりの年齢を正しく推定できる。おそらく プラスマイナス 5 年の正確さだろうと思う。ところが、胸 (乳房)、 腹、 腰 の肌を見ると、年齢推定がいきなり困難になる; つまり着物で隠されている体の部分は実年齢よりも、ずっと若いのである。年齢が一番よく表れにくい肌はここである。そこは 「常に光が当たっていない場所」 だからだ。

♣ 自分の手の甲をつねってみよう (図1)。つねった指を離すと、つねられた肌が元の平らさに戻る。若い人はすぐ元に戻るけれど、高齢者ほど、つねられた肌は立ったままだ (その理由は後で述べる)。手の甲は、顔や首の肌と異なり、他人のものであっても、あなたがじっと見つめ、または触っても失礼ではなく、年月 (としつき)の良い臨床観察ができと思う。

♣ 肌の老化は、遺伝的に定められたものだという考え方と、細胞に対する傷害物質が蓄積していくから、と考え方の二つがある。年月と光線の両方とも関係するのだろうが、顕微鏡で観察すると、老化した肌は 「光 線 性 弾 性 線 維 症」 (こうせんせい・だんせい・せんいしょう) という状態だそうだ。これは日常生活で浴びる 「紫外線」 の影響で、真皮 (しんぴ)の 弾性線維が破壊されるからである。だから皺 (しわ)が浮き立つのだ。

♣ ご存じ、光はプリズムで七色に分けられるが、紫より短い波長の光は目に見えず、よって 紫外線と呼ばれる。さらに短い光はレントゲン線、さらに短ければガンマ線と呼ばれ、その順で人体に有害である。

♣ 私たちの先輩であるお年寄りたち: 昔は労働で、または海水浴・ 日光浴などで肌を日光にさらす機会が多かったものであるが、以上のような フォトエージング の説明を受けると、なんだか 「ヒトはなぜ死ぬのか?」 の質問に答えているような 「ナゼナゼ気分」 になってしまう。

♣ お年寄りの顔には シミ や しわ が多く、また イボ 状の変化も見られる。しかし、これは歳をとっただけで起こったものではない。現にお年寄りでも日光を浴びない太股の内側などは色が白く、柔らかで、細かいしわはあるものの、深いしわはない。通常の老化は年齢と共に身体の生理的機能が損なわれていくことだが、光加齢は慢性の紫外線傷害と言える。

♣ これは加齢によって起こる老化とは質的に違う変化で、加齢による老化に上乗せの形で起る (図2)。一番大きな違いは加齢による老化では皮膚の厚さや色が薄くなる方向に向かうが、光加齢は紫外線に対する防御反応として、皮膚は厚く ゴワゴワ になり、色も濃くなる。それが シミ、 しわ となって現れる。

♣ 光加齢で特徴的なことは真皮にあって皮膚の 「張り」 を保つ弾性線維が破壊され、お団子状態になる光線性弾性線維症という変化が起こることだ。年をとっただけではこの変化は起らない。弾性線維が機能しなくなるため皮膚の張りが無くなり、しわ や、たるみ ができる。

♣ 例えてみれば赤ちゃんの皮膚は、白くて弾力に富み滑らかな 「絹のハンカチ」 、お年寄りの日光に当たらない皮膚は、白いがカサカサして薄い 「ティシュペーパー」 、お年寄りの顔は茶色くて ゴワゴワ し、曲げるとしわができる 「ボール紙」 ということになる。

♣ 皆さん、肌を大事にし、「ほどよい光加齢」 を保つように心がけよう。1852字

  要約:  人はなぜ死ぬのだろう、という質問は 皮膚はなぜ使用再生期限が 55 回程度なのか、と同じ質問である … 遺伝子がそれを決めている)。  皮膚は主に紫外線を受けて 「光 線 性 弾 性 線 維 症」 に陥る。生きている限り光に当たらざるを得ないが、着衣でそれが防がれていれば 「光加齢」 は極少で済まされる。 赤ちゃんの肌は 「絹のハンカチ」 、年寄りの皮膚は 「ゴワゴワのボール紙」 、これは主に光加齢のなす技なのである。

職員の声

声1: 人の体は消耗品か?使っても使わなくても皮膚は古くなるが …。(答:老化はどんな人にも起こり、どんな人も時間通りに必ず老化する --- ストレーラーの法則)。

声2: 皮膚の光加齢と老化は別物である(答:顔は日焼けで真っ黒、しかしお尻の肌は老化ながら真っ白、よくある組み合わせだ)。

声3: 細胞の再生は 55 回程度といわれるが、我々の皮膚から出る アカ はどれくらいで再生 1 回に相当するのか?(答:はっきりした答えはない … しかし、年寄りの肌が薄くツルツルで 僅かな接触で出血するのは 皮膚が再生限度に近づいている事を示す … 皮膚・ 骨・ 毛根・ 角膜 などは がんらい更年期 50 歳あたりで使用期限が切れるので故障が目立つ)。

声4: 社会が進歩して 「ボケ」 であったものが 「認知症」 という結構な名称で扱われ、「年寄り肌」 も 「光加齢」 などと高尚に論じられる … 基本は 「老化」 であって これはやむを得ないことである (答:確かにその通り … 我々の知恵は 「人生50年時代」 に得られたものであるが、今 その知恵だけで 「人生100年時代」 の現象を説明しようとすれば 一致しない点も目障りになるよね)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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