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(766) 六つの「べからず」、再掲

  (766) 六つの「べからず」、再 掲  → #50, #475, 680に続いて4回目になる。

ヒヤリハット・レポートで圧倒的に一番多いのは 「転倒・ 転落」 であり、パールの歴史 20 年間で、常に第一位を占めている。

♣ その一例を示すと:―― 

♣ N さん (87 歳 男性、アルツハイマー) は 「ずり落ち・ 尻餅」 の多い人で気をつけていたが、彼の夜間のトイレ・ ケア中に、遠くから呼び出し音があったので手助けにおもむき、すぐ帰ってみると N さんはトイレの傍でもう転倒していた … 幸いに怪我はなかった。トイレ内のケア中には外部対応に気をとられてはいけない、と教育を受けていたのに迂闊(うかつ)であった。

♣ このような報告は 20 年間 後を絶たず、悩みの種である。さて、「六つのべからず」 をお話しするのは これで 4 回目となる … 現場の職員にも言い分はあるだろうけれど、それほどにこの問題は深刻なのである。おそらく、各部署で語られた教訓はいっぱいあると思う。その教訓を門外不出にせず、集めてみんなの教訓にしたいものだと考える。ごく単純ながら、ここに復習してみよう。

ぐずぐず すべからず:―― ナースコールが鳴る… これで何度目か?居室に行ってみたら P トイレ前で A さん (98 歳女性) がベットの傍に倒れていて痛みを訴える … 同輩の協力を得て救急車を呼ぶ …左大腿骨骨頭骨折 の手術となる。今まで何度も転倒で呼ばれた 98 歳の方だったが、今回が “万年目の亀” となってしまった(図 1 参照)。

後ろから声を掛けるべからず:―― 後ろから名前を読んで声を掛けたら、O さん (84 歳女性) は、振り向きざま ゆらりと横転、左上腕骨折、病院で手術。お年寄りの三半規管の機能(並行感覚)は落ちていることが多い(図 1 参照)。

まさか ! と油断すべからず:―― デイサービスの朝、流れ作業で送迎バスから玄関へ人の流れがある。お一人の M さん (90 歳女性) が玄関のマットの縁につまずいて転倒、救急で病院の診察により 「鎖骨」 にひび ! .骨折でなく 「挫傷」 ですみ、ホッと胸をなでおろす。畳の 「縁」 の足を取られて転倒する老人はよく知られているが、玄関マットにも同じ問題があった ! (図 1 参照)。

外部で呼ばれても、持ち場を離れるべからず:―― Y さん (88 歳女性) のトイレ・ ケア中、遠くから呼び声がする … 氏に 「動かないでね ! 」 と念押しして、呼ばれた声のほうに行き、対応をすませ、元のトイレに戻ったら、氏はその場から移動していて、しかも 転倒・ 骨折 ! … 考えてみれば、認知症の人に 「念押し」 しても “聞く耳” はなかったのだった(図 1 参照)。

押し問答すべからず:――D さん (79 歳女性) のトイレ介助、氏は私の同室を拒否 … 危険を感じたものの、やむなく氏を一人にして、トイレの扉を閉めたところ、氏は中ですぐに転倒、大腿骨骨折。私は責任を問われてしまう(図 1 参照)―― 本人の意思を尊重したら事故になった … どうすればいいのだろう? 

♣  日頃 杖歩行でも、安心すべからず:―― デイサービスがおわり、腰かけて帰宅順番を待っている時、A さん (94 歳女性) は、ちょっと目を反した隙に、突然立ち上がり、一人で杖歩行を初めて 3m 行ったところで、杖に足をからませて転倒・ 左大腿骨の骨折(図 1 参照)。ご家族は施設内の骨折であることを理由に許して下さらず、医療費の全額支払いを求めた。

♣ ①~~⑥ は 何とみんな高齢女性の認知症であった ! 認知症の最大の特徴は 「通じない・ 待てない」 事であろう。こちらが言った事は相手に通じていないし、「見当識障害」 によって 時間の観念が消失しているから 1 秒も待てず、発作的に立ち上がり すぐ転倒だ。初心者は高齢女性の 「このリズム」 を早く習得して欲しい。

♣ 事故への対応: (A) いちはやく上司へ相談、救急車も考慮、 ( B) 家族やキーパーソンへ連絡、 (C) 家族への報告は“事故の事実だけ”を伝えること … 余分な解説や状況判断を付け加えてはいけない。個人の判断で善意に伝えても間違っているかも知れず、まして弁解やウソは絶対に言ってはならない――裁判沙汰になると苦境に立たされてしまう(図 2)。

♣ 参考までに数値を述べる。パールの特養では大腿骨骨頭骨折の頻度が … 70 歳代で 20 %、80 歳代で30 %、90 歳代で60 % … 90 歳代の過半数は骨折しており、さらに左右の両側骨折はすべて90 歳代。つまり女性は高齢になるにつれ、まずは骨折する運命にある、という覚悟で介護に当たらねばなるまい。それだけに 「六つの “べからず” 」 という教訓は

♣ 人間は、動物の中で ムリな二足歩行を選択した生き物…でもそれが役立つのは還暦の 60 歳頃までだ。戦前は人生 50 年で、還暦 60 歳を遥かに超えた 90 歳代の二足歩行の経験も習慣も無かった。本人たちはいつになっても自分は歩ける、と錯覚し転倒・ 骨折をする。現場での 色々な教訓は教科書に書いてないから、上記の 「べからず」 を上手く介護に活かして欲しい。2090字  

要約:   介護をしている目の前で骨折を起こした 2 例を述べた。 初心者でなくても、我々はつい気を許して骨折事故に出会ってしまう … 事前に注意する 「六つの “べからず” 」 を述べた。 超高齢で “二足歩行” をする経験は、人生 50 年の昔にはなかった … 甘く見て些細なことで起こる骨折は後を絶たない … “べからず” を心に銘じて欲しい。

職員の声

声1:「待ってね」、と言っても相手は 1 秒後には忘れ、転んで骨折だ(答:思い出せ ! 中核症状の第一番目は 「時間観念の喪失」 だ… 認知症の人に 「待つ」 という時間観念は消失している)。

声2: 私は 18 年間勤務して、やっと 「べからず」 の気分が分かった―― 「心」 では分かっていたが、「体」 が覚えていなかった(答: 「べからず」 に共通なことは 「認知症とは何か」 をキチンと理解し直すことだ、その中核症状とは何だったかを)。

声3: ① ぐずぐず、② 後ろから、③ 油断、④ 持ち場を離れる、⑤ 押し問答、⑥ 安心 … これら六つを守れば事故は激減するだろう、が、心せよ ! 人は失敗を起こすものである ! (答:失敗に関しては 「ハインリッヒの法則」 というのがあって、失敗に気を取られ過ぎると、かえって失敗をしでかす)。

声4: 注意に注意を重ねても、転倒は年に何度か発生する(答:二足歩行の高齢女性の転倒はごく当たり前だ… 問題は後ろに控えておられる ご家族に状況の申し開きが立つか否かだ… 分かっていただけるか?)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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