(72) PPK は望ましいか?

(72) PPK は望ましいか?   
 
PPKは “ Pin-Pin-Korori ” の略称です。世の中の人々は「畳の上で大往生したい」とか、「ピンピンコロリで逝きたい」などと言われます。日常会話の上で、別に反対する理由はありませんが、現実はどうでしょう?「畳の上で死ぬ」のは、かなり高級な望みの時代になりました。

♣ 他方、PPKについて、パールの特養では、今日の時点で 127人の方々がお亡くなりになりましたが、PPKに相当する方は一人もありませんでした。四分の一相当の方が病院にお移りになって亡くなり、残りの方々は、ご家族のあついご希望により パールでお看取りを致しました。

♣ しかし、ショートステイで例外ともいえる方がお一人あります。その方は95歳の男性。ご存知かと思いますが、ショートステイやデイサービスの医療に関しては、パール以外の主治医が立っており、方針・管理・投薬などは パールが関わっておりません。この方は、ご自分で昼食を召し上がり、その後テレビをご覧になったあと、一人で歩いて自室に戻られました。その数分後、職員が訪室すると、なんと 顔面蒼白、すでに呼吸が止まっていました。勤務医が救急蘇生に当たり、なお救急車と病院に連絡し、三次救急の手当てを受けられ、一時 回復されましたが、翌日 病院で亡くなりました。この例はPPKだった、と言えるでしょうか?

♣ 一般に PPK という言葉が好まれる理由は「本人が苦しまず、周りに迷惑が掛からない」ということのようです。「苦しむ暇がない」という点では納得できますが、「周りに迷惑を掛けない」という意味では、ま反対です。つまり、PPKほど周りに迷惑を掛けるものはない のです。日本は法治国ですから、人の死については「まっとうな原因」が必要です。もし、その原因が判然としないならば、「外因死」または「不詳の死」となり、検察の対象となります。残されたご遺族の悲嘆もさることながら、その社会的手続きは莫大なものとなります。したがって、まともの人なら、PPKであってはなりません。

♣ こう考えると、私どもは、みんな「自由に死ぬ権利」などありません。人間は 「生まれるときも、死ぬときも、大変さは同じ」です。そして、人々はその大変さを受けて立つ義務と権利を持っています。決して「何かを省略して、ラクをしてはなりません」。

♣ ひとつ 助言を差し上げましょう。「ボケ勝ち」と言う言葉をご存知ですね? 認知症の場合、一番先に障害されるのは「時間の認識」です。つまり、「昨日と今日・今と将来」が分からなくなります。将来が分からない場合、「死の不安」は消えてしまいます。すなわち、気世話な PPKを求める理由はなくなるのです。

♣ しかし、高齢者介護では、急変の確率が高く、うっかりすると 望んでもいないPPKが起こるおそれがあります。したがって、ご家族と密接な情報交換が必要です。情報を「伝えた——聞いていなかった」などのトラブルを避けるため、Informed Consent(説明と同意の書)を、早めに交わします。

♣ この意味で、医療・福祉の職員は「鎧・兜」(よろい・かぶと)で身を守っておく知恵が必要です。これは決して「非情」ではなく、将来を見通す「洞察力」の問題であり、「愛情」でもあるのです。皆さん方、私どもは 注意深く、賢くあるべきですね。 

 追補: この原稿を on したあと、12月1日の朝日新聞夕刊の一面記事に「ぽっくり逝きたい」という特集がでました。人騒がせの"PPK"が国民の多くに希望され、75%以上の人々がアンケートに"Yes"と答えました。そして、全国の「ぽっくり往生 神社仏閣」詣りが大人気だそうです。私としては ”メーファーズ”(しょうがないなー)です。

   参考:パールの安全管理 #31:ボケ勝ち

職員の声

声1: この歳の男子なら何があっても不思議ではないでしょう(係り:PPKが特別に悲しい年齢は、30歳前後の“ポックリ病”、45歳前後の“急性心筋梗塞”、60歳前後の“脳出血”でしょう;家族や社運がかかっていますから)。

声2: PPK は 周りが迷惑する、とのお話でしたが、長年 社会に貢献された ご高齢者だから、それでも良いと思います(係り:当事者でない第三者はノンキですね;この方の場合、“房室ブロック”が原因だった、と推定されます;ペースメーカーをつけていたら、防げた病気です)。

声3: PPKで とっても困りました:我が家の前のアパートに住む一人暮らしのお爺ちゃん、週一回のヘルパーさんが入っていました;ある日、ヘルパーさんが帰ったあと死亡、次のヘルパーさんが来て それを発見、近所で大騒ぎ、ヘルパーさんが疑われ、お巡りさんが近所の犯人?を訊きまわり、結局、病死?で落ち着きました;施設や病院では Informed Consent ができますが、老々介護の高齢世帯ではどうすればよいのでしょうか?(係り:パールでも医師・看護師が疑われ、三人の刑事に問い詰められました;PPKの悪さは今後もありえると思います)。

声4: 家族と医師の連携により、周囲に迷惑の掛からない死に方を相談しましょう(係り:たいての高齢者の場合は 手厚い介護の末の“誤嚥性肺炎”による死亡です—— これなら“美しい悲しみ”です)。

声5: 「生まれる準備」はしやすいが、「死ぬ準備」は難しいです。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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