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(74) 介護の不足と過剰

  (74) 介 護 の 不 足 と 過 剰  
  
  ものごとには「不足と過剰」がつきものです。たとえば 「筋トレ」や「廃用萎縮」は、“ルー(Roux)の法則”に照らせば よく理解できますよね。人は「押してだめなら 引いてみな ! 」という経験則によって「ちょうど良い結果」を獲得します。私はこの経験則は介護についても成り立つと思います。

♣ 日本の介護保険は実施以来11年、初期トラブルの時期は過ぎていると思いますが、まだ介護保険の趣旨は必ずしもご利用者に伝わっていない節が見受けられます。特に新規ご利用者の 過大な要望にワーカーが泣きます。

♣ ある58歳の女性、体が不自由だからと言って、2リットル入りのペットボトルの水を一度に10本買ってきて欲しいという注文に、職員が泣きました(20kg、小学1年生の体重ですぞ! )。72歳の女性、サービスに入る前に あたかも女王殿下の日常を取り仕切るような重々しい時間日程表を提示 → これは実務的な家庭サービスとさせて頂きました。介護職員は下男でもなく女中でもありません。あるワーカーは「相手が喜ぶからと言って、何でも手助けしてあげれば、自立に繋がらない」と主張する反面、「もし、ヘルパーに指名制度があれば、私は指名からはずされるかも . . . 」と不安を述べています。11年たった今でも、ご利用者は“介護保険法のサービス目的”が、自立支援である ことを理解できず、従って「サービス不足」と映り、職員にとっては「サービス過剰」のムリを押しつけられている実情があります。これはケアマネジャーによって説明・理解を求めましょう。

♣ 私がイギリスで経験したアン・マックファーレンさんの例をお話します。アンは54歳、股関節の問題で車椅子の一人暮らしです。頭脳は明晰、心は豊かで家庭的。お宅を訪ねると、車椅子に乗っていること以外は、まったく普通の女性で、自分で焼いたクッキーを準備、と紅茶を用意して、自分でできない台所から「運ぶこと」のみ お客に協力を求め、サービスして下さいました。不思議なマジックハンドを考案し、それらを駆使して一人暮らしの家庭生活 全てをこなされます。もちろん、政府からの援助を受けておられましたが、基本は“自立”です。福祉の「不足も過剰も」感じることはありませんでした。私は ふとアメリカの大統領ケネディが就任演説をした一句を思い出しました:「国があなたのために何ができるかを尋ねる前に、あなたが国のために何ができるかを、考えて欲しい」。

♣ 私はアンの生活態度をみて感銘を受け、翌年、彼女をゲストとして日本にお迎えし、「よりよい地域ケアを探る国際セミナー」 を全社協ホールで開きました。全国からの多数の参加者が「不足も過剰もないアンの自立の姿勢」に感動されていました。

♣ しかし、アンが魅力的な身障者生活をされている一方、イギリスという国は、サッチャー元首相の方針により、大変な医療制度になっています。日本では「3時間待ちの3分診療」と言われる不評な社会医療制度でしたが、イギリスでは3時間どころではなく「3カ月待ちの予約診療」です。良いお医者と良い患者はイギリスを去ってしまいました。他方、アメリカでは、マイケル・ムーアの映画「シッコー」でご覧のとおり、医療は保険会社の定款通りに厳格に行われ、金銭のバランス・シートは過酷です。これは「医療の不足」でしょうね。

ドイツでは、福祉の配分が「現物 or 現金」です。現金は魔物です;福祉の目的に使われると言う保証はないようです。日本では “PEG” **(胃瘻)で代表される「ヌエ」が存在します。「ヌエ」とは「掴みどころのない 正体のはっきりしない物(人)」を表わします。PEGは福祉の過剰ですか?家族の恣意的な権力の乱用ですか?それとも医療の敗北ですか?最期になりますが、共産党の小池氏は「現在の介護制度下であっても病状の悪化は観察され、介護制度は決して“介護過剰”ではない」と参議院で報告しています。

♣ 私は「不足と過剰の問題」を「自分の寿命」に置き換えて考えることがあります。やっぱり、ルー (Roux) の言うように、ものごとには「ちょうど良い落とし所」があるように思えてなりません。

  パールの安全管理 # 45 : ルー(Roux)と智恵    **パールの安全管理 # 42 : エホバ・ペグ と あなた

職員の声

声1: 理事長のイギリスのお話で目が覚めました:アン・マックファーレンは重度の身障者、でも可能な限り自立を目指している;ケアの「不足も過剰も」なく、立派です。しかしイギリスでは、病院の待ち時間は3カ月、透析は65歳で終了;そこまで聞けば、イギリスの福祉は不足か? 日本の福祉は過剰か?おのずと分かる。

声2: 日本のGDP(国内総生産)や税収等を考慮し、介護保険の趣旨 = 自立支援をよく説明すべきだ(係り:社会主義系の政府は“大きい政府”を目指し、福祉を充実させますが、他方、金儲けに熱心でないから税収が上がらず、辛い所です)。

声3: ワーカーは家政婦ではありません、介護保険の趣旨は「自立支援」です、肝に銘じましょう。

声4: 在宅介護の場合、ある程度のワガママがでるのは やむを得ません、要望をムゲに断われ切れず、一緒に働くこともあり、微妙です。

声5: 私はケアの「過剰」を怖れません、もし「不足」であったら信頼関係にヒビが入るからです。

声6: 常にご利用者に寄り添いながら、介護保険のケアと、私費の家政婦の違いを語る姿勢が必要です。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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