(76) 胃瘻のメリット・デメリット

  (76) 胃瘻のメリット・デメリット
 老衰の極に達して、食事を摂らなくなった老人に対して「胃瘻」という栄養療法があります。これに関しては、すでに「パールの安全管理」で述べているので、細かいことは触れませんが、今日の演題はパールの介護職員(若林 さほ 24F)**が、一般演題としてパールのケアカンファで発表。その反響がとても多くて(会議出席者53名中37名がこの演題に意見提出で一位);胃瘻に関する関心の高まりを共有するのが適当だと判断し、再び「胃瘻」の問題を取り上げました。

♣ 胃瘻のメリットは次の通りです:① 嚥下能力の落ちた人が、嚥下せずに食事を摂ることができる、② 誤嚥のリスクが減る、③ 経鼻経管栄養に比べ、鼻周辺の不快感が少なく、見映えがよい、④ 食事介助等の時間が少なくできる。

♣ これに対して胃瘻のデメリットは:① 食事の楽しみが無くなる、② 処置部の感染症の可能性がある、③ 喉の筋肉の廃用萎縮により、随時経口摂取を試みると誤嚥率が高い、④ 胃瘻をつけた老人を受け入れる施設は限られている、⑤ 胃瘻による延命は平均1.2年、経費は900万円***、⑥ 胃瘻は「生と死の境界を曖昧にする」という倫理上の問題がある。

その他の留意事項として:① 本人の唾、および胃瘻液の逆流による誤嚥は避けられない、② 胃瘻液補充は家族 or 看護師しか行えない(介護士は法的に不可)→ これがデメリットの④につながる。③ 胃瘻の実態は「意思の疎通のない“寝たきり”の介護延命」であり、褥創・諸臓器の退行変性や感染症などを、絶えず治療する必要がある、④ なお、胃瘻を付けても本人の老化は進行し、代謝需要は減少する。体格指数(B.M.I.)からの研究によると****、代謝需要の経時的減少に合わせて補給量を調節しないとき(無意識に一定量を補充していると)、本人は栄養補給時に異様な苦しみ声を発し、胃瘻液剤が胃から口腔内、または気管支へ逆流し、誤嚥性肺炎を併発する;有効天寿は延びない !!!

♣ 胃瘻延命については、その実態をよく知った上で 適応を慎重に判断すべきと思います。なお、欧米では、老衰延命に胃瘻を用いるという世論はありません。 彼らは胃瘻で生存しているヒトを “Breathing Cadaver” (呼吸する屍)と呼ぶそうです

参考 = パールの安全管理:#17 胃瘻と尊厳生。 #40 食べられないならムリせず。 #42 エホバ と ペグ と あなた。 **若林 さほ = 日本女子大社会福祉科卒、 社会福祉士、ヘルパー2級、精神保険福祉士。 ***佐々木英忠:高齢者肺炎における誤嚥性肺炎の重要性、日内会誌138:1777~1780, 2009。**** パールの安全管理:#33 天寿の終点は BMI = 12.0。

職員の声

声1: 家族は胃瘻について「知らない」のがほとんどです、そんな家族に胃瘻の可否を判断させるのは酷です!(係り:病院がキチンと説明すべきですね)。

声2 :親を餓死させるつもり?」という意見に、家族は震え上がってしまうそうです(係り:医師・看護師・親族のあいだで、一人でもこんな発言があると、不本意な胃瘻同意になるそうです)。

声3: 本人が延命拒否の意思を残していても、家族の希望のほうが優先されるのはナゼ?(係り:関係者が検察・マスコミ・世間体を気にするからです)。

声4: 胃瘻を付けると、食べる楽しみを奪いはしないか?(係り: 「楽しみ」と「命」をテンビンに架け、どっちを取りますか?両方を取ると言えば、それを「矛盾」と呼びます;生きるとは所詮「二者択一」のことです)。

声5: 胃瘻を付けると、本当に延命になるのですか?(係り:どの時点で胃瘻をつけるかによりますが、平均1.2年(1カ月~3年ほど);この間、老化はどんどん進み、無言・苦渋の寝たきり、褥創処置の毎日となります;親は「親離れできない子」のエゴの犠牲になります) → 拷問延命!

声6: 食べられなくなったら、自然な死を待ち、近親者一同に看取ってもらえる死が理想的です(係り:それは 良き昔の方式 です、今は忙しい時代ですから、サッと悩み、サッと胃瘻をつけ、看取る手間を省きます —— こんな世の中でありながら、パールではご家族も職員も しっかりと お看取りをしています)。

声7: パールの職員の中では借金してでも、親に胃瘻を付けるという意見の方が数人あります;議論は尽きないのでしょう?(係り: 欧米では議論は終了しています;なぜなら、大金は払えないし、この問題はそもそも「親族のエゴ、医療者の職務エゴ」以外の何物でもないからです。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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