(77) 薬って何に効くの?

  (77) 薬って何に効くの?

  皆さん方、「効くって」不思議な現象だと思いませんでしょうか? 私は一度「サンタ」というお話をしました(パールの安全管理 #29:サンタ)。つまり「使っタ 良かっタ 効いタ」の「3タ」です。健康増進薬やお化粧品の多くは「サンタ」ですね。

♣ 次に「プラセボ」の話もしました(パールの安全管理 #36:プラセボのひみつ)。新薬が世に出る前には、プラセボという偽薬(ブドウ糖など)が必要でしたね;その偽薬が案外に本薬よりも有効なことがしばしばです ! このことは「インチキ」でも何でもありません;人の心のなせるワザなのです。

♣ 今日は「ナゼ薬を使うか?」」という基本を考えます。「薬」といえば、対語は「治す」でしょう。何を治すのか、と言えば「やまい」と来るでしょうが、「やまい」は何万種類もあるので、話が発散します。ここでは、「自覚的にも 他覚的(科学的)にも効く薬」を考えます。そんなものは、10種類くらいしかありません。

♣ まず、歴史的にもっとも求められたものは ①「痛み止め」です。世界での始まりは かの「アスピリン」です(1899年、ドイツのバイエル社)。こいつは効きますね、有難いですね。明治よりも以前には 人々はどうしていたのだろう?と昔をしのびます。

♣ 次に ②「輸血」;これは1915年にクエン酸(みかんの酸っぱさの元)が血液の凝固を防ぐことが発見され、輸血の実用化が始まりました。第一次大戦は1914~1918年の後半の時期には、兵士の出血死を輸血で防ぐことに貢献しました。③ さらに十余年のちに、アレクサンダー・フレミングの抗生物質ペニシリンの発見と実用(1929年);このおかげで第二次大戦時のイギリスの首相ウインストン・チャーチルは肺炎死から免れ、祖国を救ったという有名な物語があります。

♣ ④ フリーズ・ドライ技術を応用した粉末血漿;これは第二次世界大戦の末期にアメリカの兵士が恩恵を受けました;前線では戦傷出血に輸血が間に合わず、粉末血漿の使用が多数の兵士の命を救いました。⑤ ご存知「ステロイド」!! これは1950年ころ、アメリカで徐々に実用され始めた「副腎皮質ホルモン」です。効くなんてもんじゃない ! 効き過ぎました !!

♣ ⑥~⑧ は、ページの関係で飛ばします。

♣ ⑨ 降圧薬。秋田県は日本一 脳出血の多かった県でした;白いご飯と漬物という食習慣を改め、降圧利尿薬を用い、アッと言う間に、脳出血の汚名を返上しました。しかし、時間と共に、脳出血の代わりに脳梗塞が増え始めました。薬って効いているのでしょうか?

♣ ⑩ 抗脂血症薬。これが今日の本番の薬です。先進国の世情が穏やかになって求められた薬が「長生き薬」です。そのターゲットになったのが抗脂血症薬。うまい物をたらふく食って、太って、長生きしたい。その血液内にはコレステロールという脂がある;こいつを叩こう !! 20年まえは血液100cc中250mgを正常の上限としていましたが、以後220mgに改められました。これにより、薬の適用範囲が広がり、世界中で何億人も多くの人たちが薬を飲まねばならなくなりました。ヘンではありませんか?そもそもコレステロールの60~70パーセントは自分の肝臓で作られます。コレステロールは性ホルモンの基礎物質であり、また「細胞膜」の素材でもあります。抗脂血症薬を使うと、統計的にコレステロールは下がります。世界の製薬会社は嘘を言っていません。それどころか、抗脂血症薬は 会社の研究によって高度かつ高価な新薬に置き換えられつつあり* 、商売繁盛です。しかし、最近、それが必ずしも「元気で長生き」に繋がらないことが判明しました !!!

♣ では、いったい薬が効くって、何に効くのでしょうか? 誰に恩恵があるのでしょうか?これと同じ疑問が他の薬(たとえば認知症薬)にも提出されています。もし、ある薬が「自覚的にも他覚的にも、実は効かない」とすれば、私たちはどうすればよいのでしょうか? 薬好きの日本人、じっくり考えましょう。第一、世界のタミフルの70%を日本人が消費する、と聞けば、私たちは胸に手を置いて、この事を考えるべき時期に来ていると思うのです。
 参考:Reckless Medicine By Jeanne Lenzer in Discover 11:64~76, 2010.

職員の声

声1: 厚労省の認可した薬は何種類くらいあるのですか?(係り:およそ1万種類以上あります)。

声2: 私たちは、現実に医師に勧められた薬を断るのは容易ではありません(係り:イギリスと違って、日本の保険では 容易に医師を選択できます)。

声3: 真に効く薬が10種類程度と言われても、私たちは「薬の効能書き」に頼る他の道はありません(係り:薬の選択の問題は患者サイドのほか、医師サイドにも大変な問題があり、製薬会社がさらに輪を掛けます;日本は幸福であり、かつ不幸であると言うしかありません)。

声4: 抗生薬も 最新のものは一日一回の服用で とても楽ですが、楽な余り耐性菌の出現が心配です;自分がその抗生薬を使う前に、その薬はすでに耐性菌に取り付かれているのではないかと心配です(係り:インフルエンザのワクチンでご存知のように、この問題は「イタチゴッコ」です;常に耐性菌の問題と取り組む姿勢が必要です)。

声5: お年寄りは薬をいっぱい求めます(係り:できれば何も飲まないのが良いですが、それを説得するのが大変です;特に医療費がタダの場合、市場原理が働きません から 不可能に近いです)。

声6 : 在宅介護に入って見ると、手提げ袋いっぱいに飲み薬を貰って帰るお年寄りは少なくありません;薬だけでお腹がいっぱいになりそうです(係り:多薬は それなりに効くでしょうが、闇に鉄砲、副作用も蓄積します;医師に多薬を求めるのは賢くありません)。

声7: 私はナースですが、コレステロールの薬の適応が、以前 250mg以上だったのが、いつのまにか220mgに変更された のが納得できません(係り:これは家族性高コレステロール血症以外の場合、今、世界的な問題となっています;なるほど薬はコレステロールを下げるけれど、その先どうなるかが読めていないのです)。

係りの総括:薬は匙加減」という古い言葉がありますし、近年では “tailor-made”と言って「一人ひとり違う薬を処方する」と言う考えもあります。でも、もし その基礎にある「科学」が忘れられていたら、混乱は混迷を呼ぶ と私は考えております。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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